抄録
分娩直前の母体にブドウ糖を投与し胎児膵を刺激した結果, 負荷40分以内では膀帯動脈血C-ペプチドの反応はみられないが, 負荷40分以上ではC-ペプチド値の有意な増加がみられた。これはブドウ糖負荷によりインスリソ分泌反応をみたわれわれの既報の成績と一致するもので, 胎児膵は40分以内の負荷ではブドウ糖に反応しないことが示された.
分娩後30分の新生児血中インスリン値は, 分娩時膀帯血のそれより低下するが, C-ペプチドは有意の上昇を示し, 出生直後にC-ペプチドの血中よりの消失が遅延している可能性を推定させた.
新生児のミルクを投与後のC-ペプチド反応は症例によってその程度はさまざまで, とくに生後日令との関係はみられなかった. 同時に測定した投与前, 投与後30分, 1時間, 2時間のインスリンとC-ペプチド値をそれぞれ総和し (ΣIRI, ΣCPR), その比を計算した. 出生後4日以内の新生児では成人に比しΣIRI/ΣCPRは全例で低値をとる。これはC-ペプチドの代謝遅延が出生後より少なくとも4日令まで続い・ていることを示している. C-ペプチド代謝に主として関与する腎の機能が, 出生後数日間は未熟なことが知られているが, われわれの結果はこれを反映したものと考えられる.