糖尿病
Online ISSN : 1881-588X
Print ISSN : 0021-437X
ISSN-L : 0021-437X
インスリン結合抗体の変動からみたモノコンポーネントインスリン治療の臨床的評価
岡田 究水野 信彦馬場 茂明
著者情報
ジャーナル フリー

1977 年 20 巻 4 号 p. 434-442

詳細
抄録
市販インスリン製剤の強い抗原性により, 市販インスリン使用者にインスリン結合抗体, ならびにご, インスリン・アレルギーが高率にご認められ, 糖尿病治療を困難とする場合が多い. 近年, この対策として抗原性の低いインスリン製剤としてmonocomponent insulin (以下MCインスリンと略す) が開発された. 私どもはMCインスリンを使用し, その抗原性と臨床的意義について市販インスリン製剤と比較した. 市販インスリン製剤使用にこより, インスリン結合抗体価, または, インスリン使用量が増加した9症例, インスリン・アレルギーがみられるため, 市販インスリンの使用をひかえている2症例. および, インスリン初回治療の若年性糖尿病患者1症例, 計12症例にMCインスリンを6カ月から2年半にわたり使用し, 2抗体法にて測定した125I-insuliu結合率, インスリン使用量, PEG法にて抽出した抗体結合IRIを経日的に観察し, 従来の市販インスリン治療継続症例 (72症例) と比較検討した.
(1) 市販インスリンにこ皮膚アレルギー反応を示す3症例ではMCインスリン使用にこより, アレルギー反応を認めず, インスリン治療が可能となった.
(2) MCインスリン使用にこより9例中6例では, 125I-insulin結合率は有意の低下を認めたが, 全例陰性化せず, 9例中3例では125I-insulin結合率が不変ないし, むしろ上昇傾向を示したことより, MCインスリンにもわずかながら抗原性の存在が示唆された.
(3) MCインスリン初回治療およびインスリン抗体を有しない症例ではMCインスリン治療を6ヵ月から12ヵ月間使用したが, 抗体の出現を認めなかった.
以上のことより, MCインスリンは従来の市販インスリンに比して, 抗原性は少なく, インスリン・アレルギー並びにインスリン抵抗性糖尿病の治療に有効と考えられた.
著者関連情報
© 社団法人 日本糖尿病学会
前の記事 次の記事
feedback
Top