糖尿病
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糖尿病患者における免疫遺伝学的研究 (第1報) 小児糖尿病患者および家族における抗甲状腺抗体の出現とその臨床的意義
長岡 研五鍋谷 登桜美 武彦井村 裕夫久野 昭太郎
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1977 年 20 巻 4 号 p. 443-448

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抄録
インスリン依存性の小児および若年型糖尿病患者では臓器特異的な抗体である抗甲状腺抗体, 抗胃壁細胞抗体, 抗副腎抗体等が血中に高率に証明されておりわれわれも今までの報告の中で血中抗甲状腺抗体その中でも甲状腺マイクロゾームに対する抗体の出現率が極めて高いことを強調してきた.
一方, 自己免疫疾患患者家族では患者同様血中自己抗体を証明する率が高いことが従来より指摘されている. そこで今回われわれは小児糖尿病患者およびその家族につきThyroidtest (以下TGと略す) およびMicrosometest (以下MSと略す) を施行した. その結果患者79名におけるTGおよびMSの陽性率はそれぞれ1.2%, 19%であり一方対照小児では0.4%, 1.1%と小児糖尿病患者では特にMSで有意に高い陽性率を示した. またその患者家族では, まず患者57名ではTG, MSの陽性率は0%, 16%でありその両親69名の陽性率はそれぞれ5.8%, 20.2%と患者同様高い陽性率を示し陽性者は14名中13名が母親であり同年代の正常健康なる女性 (30~49才) と比較しても有意に高い陽性率を示した.抗体陰性患者の家族ではTG, MSの陽性率は4.5%, 15.1%であり一方抗体陽性患者の家族では8.3%, 41.6%と特に抗マイクロゾーム抗体が高い陽性率を示した. 以上のようにインスリン依存性の小児糖尿病患者家族では患者同様抗マイクロゾーム抗体の陽性率が高く小児糖尿病において臓器特異的な自己抗体で最も代表的な抗甲状腺抗体を1つの指標にすると本症の発症に免疫遺伝学的因子が関与していることを示唆する結果をえた.
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© 社団法人 日本糖尿病学会
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