糖尿病
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髄膜刺激症状を呈した急性膵炎によると思われる高浸透圧性非ケトン血性糖尿病昏睡の1例
羽生 恒雄渡辺 渓子井口 利樹呉 光雄橋詰 直孝磯貝 庄
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1977 年 20 巻 4 号 p. 469-473

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抄録

高浸透圧性非ケトン血性糖尿病昏睡時に髄膜刺激症状のみられた症例報告は, 諸外国でも数例にすぎず, 本邦ではいまだないので, 自験例を報告する.
糖尿病歴がなかった43才の家婦が, 昭和49年10月10日感冒様症状を示し, やがて枢吐, 口渇を訴え, 10月20日上腹部痛が出現し, 背部へ放散した.10月23日両手の振せんと, 嗜眠状態によって当科に救急入院した. 入院時髄膜刺激症状 (項部強直, ケルニッヒ微候) 著明で, 髄膜炎, クモ膜下出血などが疑われたが, 髄液検査成績により否定された. また上腹部に筋性防御を認め, 血清アミラーゼ34201U/L, 尿ケトン体陰性, Ht55%, 血糖1570mg/dl, Na149mEq/L, K4.5mEq/L, BUN62.5ng/dl, 血清浸透圧508mOs/L, pH7.325, BE-5.0mEq/Lで, 急性膵炎による高浸透圧性非ケトン血性糖尿病昏睡と考えられた.
髄膜刺激症状出現の機序は, 明らかにされていないが, 本症例では, 8000mlという多量の補液後, また補液開始23時間後という短時間内に消失したことから, 高度の脱水が本症状の出現した主な原因と推察された。
髄膜刺激症状が前景となると, 高浸透圧性非ケトン血性糖尿病昏睡の診断を困難にさせ, したがって適切な治療の開始が遅れるので臨床上留意する必要があると思われた.

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