糖尿病
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トルブタミド使用2カ月後に高度の溶血性貧血を発現した糖尿病の1例
若月 雅子横須賀 智子大井 一輝斎藤 玲子平田 幸正
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1978 年 21 巻 8 号 p. 769-774

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抄録
トルブタミド使用後2カ月目に著明な溶血性貧血を呈した46歳の男性糖尿病患者につき報告する.患者は昭和51年1月12日, 上腹部痛, 下腿のピリピリした痛み, 全身倦怠感を主訴として来院した.空腹時血糖値は186mg/dlで, 強度の貧血あり, 眼球結膜には軽度の黄疸を認め, 肝を2横指触知した.検査所見では, 血液ヘモグロビン値6.7g/dl, 赤血球数204万, 網状赤血球155%0であり, 尿ウロビリノーゲンは強陽性, 血清ビリルビン値は2.91mg/dl, 間接型は1.64mg/dlであり, 溶血性貧血と思われた.
患者は昭和50年10月糖尿病を発見され, 11月6日よりトルブタミド1g/日を服用していた.トルブタミドによる副作用を疑い, 投薬を中止するとともに, レンテインスリン12単位を使用したところ, 貧血は改善した.
溶血性貧血に関する検査では, Coombs試験は直接, 間接法ともに陰性で, 赤血球酵素はglucose-6-phosphatedehydrogenescを含めすべて正常, ヘモグロビン電気泳動でも, ヘモグロビンFがやや高値を示した以外は正常であった.
したがって著者らの調べた限りでは, 本症例の溶血性貧血の原因は明らかではなかったが, トルブタミド使用前はヘモグロビン値15.4g/dtと貧血は全く認めず, 使用中止により貧血が改善したことより, 本症例の溶血性貧血と, トルブタミドとの問に何らかの関連牲が疑われた。
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© 社団法人 日本糖尿病学会
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