糖尿病
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21 巻, 8 号
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  • 天工 厚子
    1978 年21 巻8 号 p. 711-721
    発行日: 1978/08/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    昭和50年7月までの従来の市販インスリン製剤で治療中の糖尿病患者11例および, インスリン治療歴のない糖尿病患者8例に, monocomponent insulin (MCインスリン) を使用し, ブタおよびウシ・プロインスリン特異抗体, インスリン抗体および血清総インスリンを測定した.
    従来の市販インスリン製剤からMCインスリン治療へ転換した例では, プロインスリン特異抗体およびインスリン抗体はともに低下したが, 特にプロインスリン特異抗体の低下が著明であった.このように低下したプロィンスリン特異抗体は, 転換後6~12ヵ月でも再上昇の傾向を示さなかったが, インスリン抗体は一部の例で転換後数ヵ月で再上昇の傾向を示した.血清総インスリンは転換後著明に減少し, 6~12ヵ月後も増加の傾向は示さなかった.
    MCインスリンによる初回治療例では, 治療開始後6~12ヵ月間全例でプロインスリン特異抗体は認めなかったが, 治療の数ヵ月以後に一部の症例で弱いインスリン抗体の産生の傾向を認めた.血清総インスリンは, MCインスリン治療の6~12ヵ月間で, 平均200μU/mJ以下の値を示した.
    以上の成績から, MCインスリンは, 従来の市販インスリン製剤に比して抗原性は低く, 特にプロインスリン特異抗体は産生しがたいものと考えられる.
  • 井村 満男
    1978 年21 巻8 号 p. 723-731
    発行日: 1978/08/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    正常および糖尿病ラット骨格筋のピルビン酸脱水素酵素複合体活性の調節機構について検討した.
    1) 本酵素複合体の全活性は慢性糖尿病群のみ減少した.
    2) 本酵素複合体の活性型は急性糖尿病群, 慢性糖尿病群, インスリン中断糖尿病群で減少し, インスリン治療により正常群のレベルに回復した.
    3) 電気刺激による筋肉収縮で, 対照群, 急性糖尿病群, 慢性糖尿病群の本酵素複合体の活性型が増加した.
    4) 本酵素複合体活性の活性型一不活性型転換に影響を及ぼす因子であるピルビン酸量, CoA/アセチルCoA比, ATP/ADP比を測定した結果, いずれの群も本酵素複合体の活性型に対応した変化は認められなかった.
    これらの結果より, 急性糖尿病ラット, 慢性糖尿病ラット骨格筋の本酵素複合体活性型の変化はピルビン酸量, COA/アセチルCOA比, ATP/ADP比で調節されていると言う考えのみでは説明できないことを示唆する.
  • 大石 まり子, 西川 光重, 蔵田 駿一郎, 稲田 満夫
    1978 年21 巻8 号 p. 733-742
    発行日: 1978/08/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    歳以下で発症した若年発症糖尿病患者36例および30歳以上で発症した成人発症糖尿病患者255例で, 先ず, 注意深い前頸部の触診により, 甲状腺腫の有無を検査した.若年発症群で4例 (11.1%), 成人発症群で35例 (13.7%) にび漫性甲状腺腫をみとめた.
    成人発症糖尿病で, 甲状腺腫を有するものは, 30歳および40歳台の女性に多い傾向を有し, また, 甲状腺腫を有する群で, 血中抗甲状腺抗体, とくに, マイクロゾーム試験の陽性率が34.3%と極めて高率であった.
    さらに, 甲状腺針生検, あるいは, 抗甲状腺抗体陽性の所見より, 橋本病と診断されたものは, 37.1%以上あり, それは成人発症群の5.1%以上で, 成人発症糖尿病の抗体陽性率にほぼ一致した。一方, 甲状腺腫を有しない群の抗体陽性率は, 従来より報告されている健康人のそれと大差はなかった.かくして, 成人発症糖尿病での抗甲状腺抗体の出現は, 主として, 橋本病の合併によると推定された.
    若年発症糖尿病で, 甲状腺腫を有する4症例は, 甲状腺針生検により, 橋本病と診断された.したがって, 若年発症群の橋本病合併率は11.1%で, 従来より報告されている若年者の橋本病有病率1%以下に比し, 極めて高いと考えられた.ここで, 橋本病を合併した4症例を詳細に検討すると, インスリン依存性の比較的重症のものが多く, 全例でマイクロゾーム試験が陽性, しかも, 高抗体価であり, 家族歴が比較的濃厚等の特殊性がみられた.
  • 糖尿病性網膜症と脳梗塞との関係にっいて
    井藤 英喜, 折茂 肇, 中野 忠澄, 大山 俊郎, 白木 正孝, 後藤 一紀, 中尾 純子, 戸張 幾生, 後藤 昌司, 勘場 貢
    1978 年21 巻8 号 p. 743-749
    発行日: 1978/08/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    60歳以上の老年者糖尿病型耐糖能127例を対象として, 糖尿病性網膜症と脳梗塞との関係につき検討を加え次の結果を得た.
    1) 糖尿病性網膜症を認めた群 (N=52) の脳梗塞発症率は57.7%(30/52) であり, 糖尿病性網膜症を認めなかった群の32%(24/75) に比し有意に高値であった (P<0.01).
    2) 年齢, 性, 骨粗霧化, ヘメトクリット値, 血清中性脂肪値, 血清コレステロール値, 高血圧の有無, 血清尿酸値, 血漿フィブリノーゲン値, 糖尿病性網膜症, insulinogenic index, 空腹時血糖値, 糖負荷後血糖項い値, 糖負荷後の血糖パターン, 糖尿病罹病期間の15要因と脳梗塞との関係をカテゴリカル回帰分析を用て検討した.その結果, 脳梗塞と有意な関係を示す要因は糖尿病性網膜症と血清中性脂肪値であった.
    3) 糖尿病性網膜症の重症度と脳梗塞の問には有意な相関々係は認められなかった.
    以上のことより糖尿病性網膜症すなわち糖尿病性細小血管症と, 脳梗塞すなわち動脈硬化性血管障害は密接な関係を有するが, それぞれの進展, 発症因子は全く同一とは言えないことが示唆された.
  • (2) 臨床応用
    市川 勝之, 赤沼 安夫, 小坂 樹徳
    1978 年21 巻8 号 p. 751-755
    発行日: 1978/08/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    スルフオニル尿素 (SU) 剤内服者83名の血漿SUレベルをガスクロマトグラフィにより測定した.
    (1) 早朝空腹時のSUレベル (基礎SUレベル) と経口投与量との相関係数は, トルブタマイド (TB): 0.64 (n=53), クロールプロパマイド (CP): 0.61 (n=30) で, ともに有意 (P<0.01) であった。同一投与量に対する個人差は特にCPの方が大であった. (2) CPO.59内服者10名の基礎CPレベルと肥満度との問に有意の負相関 (r=-0.81, P<0.05) を認めたが, TBではこの傾向は認められなかった。(3) 基礎インスリンレベルと基礎SUレベルとの間に有意の相関関係は認めなかった. (4) SU剤の投与期間が5年未満の者と, 10年以上の者とでは, 投与量, 基礎SUレベルの関係に差は認められなかった. (5) 1ヵ月の間に基礎TBレベルを2回測定した27名について基礎TBレベルの高い時にBSの低下している者と, そうでない者とに分けると, TB1。09投与者には前者が多く, TB0.259投与者では後者が多く, 0.59投与者はその中間型を示した. (6) 生体が2コンパートメント系に従うと仮定すると, TB, CPの代謝排泄速度に差があること, アルブミンとの結合結数に差があることなどから上記の事実が薬物動態の面からある程度説明可能であった.
  • 特にGlibenclamide投与による血糖コントロー・ルの影響について
    松谷 秀俊, 白川 博史, 江本 正直, 猪尾 和弘, 宮村 敬, 西村 正彦
    1978 年21 巻8 号 p. 757-767
    発行日: 1978/08/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    自然発症糖尿病動物であるKKマウスに, 経口血糖降下剤のglibenclamide25~75μg/日を, 尿糖の出現する生後3ヵ月から8ヵ月まで, 連日尿糖陰性化を目標に投与し, 腎糸球体病変について, 一般的なmorphologic studyとmorphometric studyをおこない, 同月齢のKKマウス未処置群および非糖尿病動物のC578Lマウスと比較検討した.その結果, KKマウスにglibenclamideを投与し, 血糖をコントロールすることは, 腎糸球体の大きさ, 基底膜の幅, mesangial areaの増大を軽減させた。しかしながら, それでもなおかつC57BLマウスより糸球体病変は高度であった.したがって, 血糖のコントロールは, 首尾よくなされるならばglibenclamideであれ, KKマウスの腎病変の進展遅延化に有効であるが, それでもなおかつ改善されずに存在するであろう糖尿病性代謝異常, および, この動物のもつ先天的な因子の両者の関与の可能性が示唆された.
    一方, 8ヵ月齢のKKマウスの糸球体病変の進展機序の一端を知る目的で, 3H-proline, 3H-lysineを腹腔内に投与し, 24時間口, 16日目にそれぞれ腎皮質のradioactivityを求めると, 16日値 (cpm)/24時間値 (cpm) はKKマウスがC57HLマウスより大でautoradiographyでのglomerular tuft単位面積あたりのgrain countからも, この傾向が肯定された.したがってproline, 1ysineは腎皮質ないし糸球体にくみこまれた後, 長期に残存する傾向が, 特徴あるKKマウスの腎症進展の一端を示していると思われる.
  • 若月 雅子, 横須賀 智子, 大井 一輝, 斎藤 玲子, 平田 幸正
    1978 年21 巻8 号 p. 769-774
    発行日: 1978/08/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    トルブタミド使用後2カ月目に著明な溶血性貧血を呈した46歳の男性糖尿病患者につき報告する.患者は昭和51年1月12日, 上腹部痛, 下腿のピリピリした痛み, 全身倦怠感を主訴として来院した.空腹時血糖値は186mg/dlで, 強度の貧血あり, 眼球結膜には軽度の黄疸を認め, 肝を2横指触知した.検査所見では, 血液ヘモグロビン値6.7g/dl, 赤血球数204万, 網状赤血球155%0であり, 尿ウロビリノーゲンは強陽性, 血清ビリルビン値は2.91mg/dl, 間接型は1.64mg/dlであり, 溶血性貧血と思われた.
    患者は昭和50年10月糖尿病を発見され, 11月6日よりトルブタミド1g/日を服用していた.トルブタミドによる副作用を疑い, 投薬を中止するとともに, レンテインスリン12単位を使用したところ, 貧血は改善した.
    溶血性貧血に関する検査では, Coombs試験は直接, 間接法ともに陰性で, 赤血球酵素はglucose-6-phosphatedehydrogenescを含めすべて正常, ヘモグロビン電気泳動でも, ヘモグロビンFがやや高値を示した以外は正常であった.
    したがって著者らの調べた限りでは, 本症例の溶血性貧血の原因は明らかではなかったが, トルブタミド使用前はヘモグロビン値15.4g/dtと貧血は全く認めず, 使用中止により貧血が改善したことより, 本症例の溶血性貧血と, トルブタミドとの問に何らかの関連牲が疑われた。
  • 1978 年21 巻8 号 p. 775-803
    発行日: 1978/08/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
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