糖尿病
Online ISSN : 1881-588X
Print ISSN : 0021-437X
ISSN-L : 0021-437X
糖尿病性壊疽23例の臨床的観察と下肢の血行動態について
松田 文子葛谷 健坂本 美一吉田 尚森岡 恭彦
著者情報
ジャーナル フリー

1979 年 22 巻 8 号 p. 907-915

詳細
抄録
糖尿病性壊疽23例の臨床像, 局所潰瘍の特徴を報告しあわせて血管造影, 指尖容積脈波図, サーモグラムを用いて下肢の血行動態を検索した. 3例に組織学的検索も行った. 糖尿病性壊疽患者の臨床的特徴は従来の報告と一致しており高齢者で罹病期間の長いコントロール不良群に多かった. 網膜症, 腎症, 神経症の合併頻度がいちじるしく高く, 脳硬塞, 心筋硬塞の合併は少なかった. 血管造影, 脈波図, サーモグラムでは局所主幹動脈より末梢部ことに足指での血行障害の存在が示唆された。組織学的検索でも小動脈, 細動脈での硬化性病変が局所のみならず全身臓器に認められた. 壊疽病変は足部に限局し足指足背足底に好発し多発する傾向があり, 性状は比較的浅く円形または斑状で周囲の皮膚には他の動脈閉塞性壊疽にみられる乏血性反応をまったく欠如していた. 感染が続発して湿性潰瘍となりやすいが疹痛は激しくなく, 全身に対する糖尿病の治療および抗生物質の投与によく反応して改善傾向をみせるものが多かった. しかし再発傾向が認められた. 誘因として火傷, 水泡の前駆が多かった. 糖尿病壊疽の診断として主幹動脈閉塞の有無による鑑別が一般に行われているが糖尿病性壊疽は特徴的な局所潰瘍の所見で鑑別することができること, 主幹動脈拍動は良好に保持されてはいるがそれより末梢での硬化性閉塞性病変が広範に認められることを指摘した。又細小血管症と細動脈硬化との関連について討論した.
著者関連情報
© 社団法人 日本糖尿病学会
前の記事 次の記事
feedback
Top