近年, 膵由来の新しいホルモンと目されてるhuman Pancreatic Polypeptide (hPP) のRadioimmunoassay (RIA) を確立し, 正常ヒトおよび糖尿病患者の血漿hPP基礎値について検討を加えた.
(1) hPPのRIAは, クロラミンT法により標識した125I-bovinePP (bPP) と抗hPP抗体 (最終稀釈96万倍) を用い, hPPを標準品とするheterologousRIAで行い, FとBの分離には二抗体法を採用した. 本法の最少検出量は30pg/mlで, 抗hPP抗体とMCブタインスリン, ブタグルカゴン, 合成ソマトスタチン等の他のペプチドホルモンとの間に交叉性を認めなかった. また, ヒト血漿に標準hPPを添加した際の回収率は85.5~106.9%で, intraassay C.V.%は5.1~6.6%, interassayC.V.%は5.2~10.9%であった. 以上の成績より本法は, 感度, 特異性, 精度, 再現性において十分臨床応用が可能であると考察された.
(2) 正常ヒト血漿hPP基礎値は, 20歳代の60.0±8.5gpg/mlから加齢とともに上昇を示し, hPP値と年齢との間に有意の相関 (γ=0.53, P<0.01) がみられた. また糖尿病患者においても, 血漿hPP基礎値は加齢とともに高値となる傾向を示したが, 若年発症糖尿病患者からなる20歳代のinsulin治療群と, 60歳以上の経口剤治療群では同年代の正常とトと比べて有意に高値であった.
以上の事実は, 血漿hPP値の上昇機転と加齢や糖尿病病態との間に密接な関連性を示唆するものであった. 以上のことより, 血漿hPP値の測定は, 加齢や糖尿病の病因論的, 病態生理学的意義解明の一手段になりうるものと推測された.
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