糖尿病
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糖代謝異常者の悪化要因
長期経過観察による検討
佐々木 陽鈴木 隆一郎堀内 成人上原 ます子
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1981 年 24 巻 6 号 p. 635-640

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抄録

疫学調査において食後尿糖陽性のためにブドウ糖経口負荷試験 (OGTTと略) を行つた507名を, 7年後に再度検査に呼び出し, この期間中の死亡者88名を除いた419名中207名が受診した.この対象を用いて, 糖代謝異常から糖尿病への悪化率および悪化のrisk factorについて検討した.
1) 7年後の追跡検診時のOGTTの各測定値は, 初診時に比しいずれも10%近く上昇した.この傾向は肥満群においてとくに顕著にみられた.また, 初診時の2時間値 (2-hと略) 110~199mg/dlのものは, 非肥満の場合は7年後には血糖値のより低い方 (2-h<110mg/dl) へ移行する傾向が強いのに対し, 肥満者では高値側 (2-h≧200mg/dl) へ移行するものが多くみられた.
2) 初診時に空腹時値 (Fと略)<140mg/dlかつ2時間値く200mg/dlのものについて, WHO 1980年基準によるdiabetes (F≧140mg/dlまたは2-h≧140mg/dl) への悪化率をみると, 初診時の2時間値の高いものほど悪化率が高くなる傾向がみられた.また, この対象を学会基準によつてさらに正常型, 境界型, 糖尿病型に分けると, 悪化率はそれぞれ1.1%, 8.5%, 55.6%となった.
以上の結果, 従来の境界型の大部分は管理上正常扱いでよいと判断されたが, 血糖値の高いものおよび肥満者は悪化傾向の強いことが指摘された.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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