糖尿病
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24 巻, 6 号
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  • インスリン製剤およびその関連物質のIgEインスリン抗体産生能に関する免疫遺伝学的検討
    伊藤 真一, 中山 徹, 長岡 利子, 川口 尚志, 桃井 宏直
    1981 年 24 巻 6 号 p. 619-626
    発行日: 1981/06/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    われわれは即時型インスリンアレルギーの成立には製剤爽雑物も関与することを指摘してきた.今回はラットと近交系マウスを用いて本症の免疫遺伝学的背景を検討し, さらにインスリンアミノ酸配列の差異とIgE抗体発現の関連, 精製インスリンにより作製した抗体と各種インスリンとの交叉反応性についても検討した.ラットにおける免疫方法は多田らの方法により, マウスにおいては石坂らの方法で行った.ラットIgE抗体の検出はラットーラット60hr-PCA, マウスIgE抗体はマウスーラット4h-PCAによった.
    ラットでは, ウシ-a-分画が最も強い抗原性 (約32倍) を示したが, ウシ, ブタ精製インスリンは抗体産生能を認めなかった.近交系マウスでウシ-b-分画による産生能をみると, H-2dがhigh responder (約320倍), H-2bは中等度 (80倍), H-2k, H-2sでは認めなかつた.したがって抗体産生に遺伝因子の関与が推定できる.high responder系のマウスでは, ウシ, ブタ精製インスリンにも軽度ながら抗体産生能を認めたが, 同様であるマウス・インスリンでは認めなかった.
    抗ウシ精製インスリン抗体は, ブタ精製インスリンと交叉反応性を示したが, マウスおよびカツオ・インスリンとは反応しなかった。抗ブタ精製インスリン抗体についてもこれと同様な傾向がみられた.
  • 土屋 和子, 藤沢 隆雄, 松倉 寛
    1981 年 24 巻 6 号 p. 627-633
    発行日: 1981/06/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    Plasma glycosylated protein (GP) の測定法を検討して, Plasma free glucoseの一部が蓚酸処理によりglucose濃度に比例して5-hydroxy methylfurfral (HMF) に転化するので, 血糖に基づいてGP値を補正する必要のあることを明らかにした.この補正を行って糖尿病者と健常者のGPとHemoglobin AI (HbAI) を測定しつぎの成績を得た. (1) 糖尿病者のGPとHbAiはともに健常者に比し有意に高値であった (p<0.001).糖尿病者のGP値の変動系数は18%でHbAIの27%に比し低かつた. (2) 糖尿病者のGPおよびHbAIの同時に測定した空腹時血糖値 (FBS) との相関係数はそれぞれr=0.605およびr=0.618と近似していた.GPはHbAIと正相関 (r=0.547) を示した. (3) 治療法別にみるとGP, HbAIおよびFBSは食事療法 (Diet), 薬物療法 (Drug), Insulin群の順に高値となつた.GPとHbAIのFBSとの間の相関度はともにDrug群で最も高く, ことにHbAiの場合に高かつた (r=0.798).GPとHbAIとの相関度はDiet群がもっとも低く, Drug群とinsulin群では近似していた. (4) 糖尿病者のHbAIは2~3ヵ月前の食後2時間血糖値 (2h-BS) とより高い相関を示し, GPは1~2ヵ月前の2h-BSとより高い相関をもつ傾向が認められた.
    以上の結果よりGPは, 糖尿病コントロールの指標としてすぐれている.HbAIに比して測定が繁雑である割りには有用とは思えず, その臨床的応用の意義は少ないと思われた.
  • 長期経過観察による検討
    佐々木 陽, 鈴木 隆一郎, 堀内 成人, 上原 ます子
    1981 年 24 巻 6 号 p. 635-640
    発行日: 1981/06/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    疫学調査において食後尿糖陽性のためにブドウ糖経口負荷試験 (OGTTと略) を行つた507名を, 7年後に再度検査に呼び出し, この期間中の死亡者88名を除いた419名中207名が受診した.この対象を用いて, 糖代謝異常から糖尿病への悪化率および悪化のrisk factorについて検討した.
    1) 7年後の追跡検診時のOGTTの各測定値は, 初診時に比しいずれも10%近く上昇した.この傾向は肥満群においてとくに顕著にみられた.また, 初診時の2時間値 (2-hと略) 110~199mg/dlのものは, 非肥満の場合は7年後には血糖値のより低い方 (2-h<110mg/dl) へ移行する傾向が強いのに対し, 肥満者では高値側 (2-h≧200mg/dl) へ移行するものが多くみられた.
    2) 初診時に空腹時値 (Fと略)<140mg/dlかつ2時間値く200mg/dlのものについて, WHO 1980年基準によるdiabetes (F≧140mg/dlまたは2-h≧140mg/dl) への悪化率をみると, 初診時の2時間値の高いものほど悪化率が高くなる傾向がみられた.また, この対象を学会基準によつてさらに正常型, 境界型, 糖尿病型に分けると, 悪化率はそれぞれ1.1%, 8.5%, 55.6%となった.
    以上の結果, 従来の境界型の大部分は管理上正常扱いでよいと判断されたが, 血糖値の高いものおよび肥満者は悪化傾向の強いことが指摘された.
  • 田中 明, 若林 哲雄, 杉山 博通, 内村 功, 前沢 秀憲
    1981 年 24 巻 6 号 p. 641-647
    発行日: 1981/06/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    インスリン治療中の糖尿病患者にみられる血漿HDL・コレステロール (HDL・C) 上昇の特性を明らかにするため,(1) HDL・Cに影響力の大きい要因を解析し, これらをマッチさせた各療法群間の比較,(2) 同一例でインスリン注射によるHDL・Cおよび諸影響要因の変動, 相関の検討をした.健常287例, 糖尿病213例についてヘパリン・Mn法によるHDL・Cを比較したところ, インスリン群男子では健常男子, 食事群男子より有意に高値であった (p<0.01).HDL・Cに影響する要因の重回帰分析によりトリグリセリド・総コレステロール・肥満度を選択し, これらをマッチさせた糖尿病合計155例で, 各療法群間のHDL・Cを比較したところ, インスリン群は他群に比し高値であり, とくにインスリン群男子は食事群男子より有意に高値であった (p<0.02).糖尿病12例についてインスリン投与による諸要因の変動を検討したところ, HDL・Cは, 有意の上昇を示したが (p<0.02).この上昇はトリグリセリド・総コレステロール・肥満度・血糖の変化とは有意の相関を示さなかった.以上よりインスリン治療にHDL・C上昇作用の存在することが示唆され, TG・TC・肥満の影響による単なる結果でなく, またインスリン療法群患者の特性でない事が明らかにされた.
  • 池田 匡, 浜崎 尚文, 徳盛 豊, 武田 倬, 富長 将人, 真柴 裕人
    1981 年 24 巻 6 号 p. 649-654
    発行日: 1981/06/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    甲状腺ホルモンの膵内分泌機能におよぼす影響を検討する目的で, 14日間にわたりL-サイロキシン (80μg/day) を腹腔内注射したラットを用い, 経静脈ブドウ糖負荷試験 (IV-GTT), アルギニン負荷試験 (ATT) および摘出膵を用いた灌流実験を施行し, インスリンならびにグルカゴン反応を観察した.
    IV-GTTにおいて, 耐糖能障害はみられなかったが, インスリンは低反応を示し, ATTでのインスリンは高反応を示した.しかし, 灌流実験においては, ブドウ糖やアルギエンに対するインスリン反応には変化がみられなかった.一方, グルカゴンの反応には, in vivo, in vitroいずれにおいても著明な差は認められなかった.
    以上より, サイロキシンは, 生体においてインスリン分泌に強い影響力を有しているが, グルカゴン分泌にはそれほど影響を与えないものと思われた.
  • 杉山 博通, 内村 功, 小田倉 力, 前沢 秀憲
    1981 年 24 巻 6 号 p. 655-661
    発行日: 1981/06/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    成人発症糖尿病においても若年発症例と同様なレニン・アンジオテンシン・アルドステロン (RAA) 系活性の低下が存在するか, また腎症に伴う高血圧の特徴を明らかにする目的で, 腎症が存在するのにかかわらず, 血圧および腎機能が正常の患者についてRAA系の動態を検討した.すなわち, 成人発症糖尿病27例 (持続的蛋白尿陽性10例, 陰性17例) および対照15例について, 臥床安静時およびfurosemide (40mg i.v.) +立位負荷後の血漿レニン (PRA), アルドステロン (PA) を測定した.蛋白尿陽性群では, 臥床安静時, 負荷後のPRA, PAはいずれも他の2群より低値であったが, 蛋白尿陰性群は対照群と有意差を示さなかった.蛋白尿陰性群の負荷後PRAは対照群と差はなかったが, PAはより高値であった.以上の成績から, 成人発症糖尿病においても持続性蛋白尿出現時には, 低レニン低アルドステロン状態の出現することが明らかにされた.これは, 高血圧, 腎機能低下のない場合にもみられ, 腎症合併例の特徴的病態と考えられた.
  • 今村 憲市, 中村 光男, 宮沢 正, 阿部 泰久, 成田 祥耕, 大平 誠一, 武部 和夫, 八木橋 操六
    1981 年 24 巻 6 号 p. 663-668
    発行日: 1981/06/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    徒来, 膵性糖尿病には糖尿病性神経障害はおこりにくいとされていたが, 1966年以降の欧米の報告では膵性糖尿病でも少なからず神経障害の発生を認めることが指摘されている.しかし, 本邦では膵性糖尿病での神経合併症の有無を詳細に検討した報告は少なく, この一因として, 本邦ではアルコール性膵炎が多いため, アルコール性末梢神経障害と糖尿病性末梢神経障害との鑑別が困難なことが考えられる.今回, 禁酒のなされている石灰化膵炎39例と, 一次性糖尿病59例を対照として糖尿病性神経障害の発生頻度, 特徴等につき検索を行った.末梢神経障害はアキレス腱反射消失および減弱, MNCV低下の有無によって判定した.膵性糖尿病では, 糖尿病罹病期間5年以上11例中7例, 5年以下28例中6例に糖尿病に基因すると考えられる末梢神経障害を認めた.これら13例ともインスリン使用例であり, 全例に糖尿病家族歴を認めなかつた.有痛性神経障害を5例に認めた.一方, 一次性糖尿病では, 罹病期間5年以上24例中14例, 5年以下35例中14例に末梢神経障害を認め, 更に食事療法のみの軽症糖尿病例にも神経障害が認められた.したがって, 膵性糖尿病での神経障害発生には, 糖尿病重症度, 糖尿病罹病期間がその発生に大きく関与すると考えられ, 一次性糖尿病との間に若干の病態の相違が認められた.また, 糖尿病罹病期間1年の膵性糖尿病例でVasa nervorum壁肥厚を認めた例があり注目された.
  • 真鍋 重夫, 和田 攻
    1981 年 24 巻 6 号 p. 669-677
    発行日: 1981/06/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    フェニル錫化合物は, 農薬や船底塗料等に広く使用されている.われわれは, これらの生体内代謝及び毒性研究の過程で, トリフェニル錫フルオライド (TPTF) 投与家兎が高脂血症をきたすことを見い出した.今回TPTF経口投与で生ずる高脂血症の発生機序を解明する目的で, 経時的に空腹時血糖・ブドウ糖負荷試験, 血漿IRI, 血漿脂質及びリポプロテインリパーゼ (LPL) 活性を追跡した.
    TPTF投与後, 空腹時血糖, 血漿トリグリセライド値は約10日間有意 (p<0.02) に上昇しリポタンパク分析では, カイロミクロンと, VLDLの著しい蓄積を認めた.また, LPL活性及び脂肪組織LPLは著明に低下する. (p<0.02) この時期にインスリンを投与するとLPLは正常化するが, インスリンを中止すると再び低下する.組織学的には, 肝・腎・膵島ともに著明な変化は見られず, 高脂血症の極期でさえも, 膵β細胞顆粒には異常を認めていない.こうした時期には, ブドウ糖負荷前及び負荷後でさえ, IRIは低値を示す.以上の変化は, 1回投与後約10週間ですべて正常化する.したがって, TPTF投与家兎にみられる高脂血症と各段階の耐糖能低下は, 一過性インスリン欠乏に起因し, その機序として膵β細胞におけるインスリン放出過程の障害あるいは, 膵島の糖感受性の低下ないし遮断などによる可能性が最も推定される.
    本動物は, 糖尿病及びその脂質代謝への影響などの研究に有用なモデルと考えられる.
  • 1981 年 24 巻 6 号 p. 679-694
    発行日: 1981/06/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
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