糖尿病
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トリフェニル錫フルオライド1回経口投与家兎にみられる一過性糖尿病性高脂血症及び可逆性耐糖能低下について
真鍋 重夫和田 攻
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1981 年 24 巻 6 号 p. 669-677

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抄録

フェニル錫化合物は, 農薬や船底塗料等に広く使用されている.われわれは, これらの生体内代謝及び毒性研究の過程で, トリフェニル錫フルオライド (TPTF) 投与家兎が高脂血症をきたすことを見い出した.今回TPTF経口投与で生ずる高脂血症の発生機序を解明する目的で, 経時的に空腹時血糖・ブドウ糖負荷試験, 血漿IRI, 血漿脂質及びリポプロテインリパーゼ (LPL) 活性を追跡した.
TPTF投与後, 空腹時血糖, 血漿トリグリセライド値は約10日間有意 (p<0.02) に上昇しリポタンパク分析では, カイロミクロンと, VLDLの著しい蓄積を認めた.また, LPL活性及び脂肪組織LPLは著明に低下する. (p<0.02) この時期にインスリンを投与するとLPLは正常化するが, インスリンを中止すると再び低下する.組織学的には, 肝・腎・膵島ともに著明な変化は見られず, 高脂血症の極期でさえも, 膵β細胞顆粒には異常を認めていない.こうした時期には, ブドウ糖負荷前及び負荷後でさえ, IRIは低値を示す.以上の変化は, 1回投与後約10週間ですべて正常化する.したがって, TPTF投与家兎にみられる高脂血症と各段階の耐糖能低下は, 一過性インスリン欠乏に起因し, その機序として膵β細胞におけるインスリン放出過程の障害あるいは, 膵島の糖感受性の低下ないし遮断などによる可能性が最も推定される.
本動物は, 糖尿病及びその脂質代謝への影響などの研究に有用なモデルと考えられる.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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