抄録
糖尿病妊婦におけるインスリン需要量の変化が, インスリン抗体の推移と関連がないかどうか, また, 新生児低血糖が, インスリン抗体と関連がないかどうかを知るために, 妊娠全経過を通してインスリン治療を行った17名の糖尿病妊婦20分娩例において妊娠前期, 中期, 後期, 分娩後に125I-インスリン結合率を測定した.125I-インスリン結合率が後期において5%以上の低下を示した症例において同血清にて遊離インスリンを測定した.
20例の糖尿病妊婦における平均125I-インスリン結合率は, 妊娠前期21.2%, 中期21.1%と不変であり, 妊娠後期17.6%と低い傾向を示し, 分娩後24, 6%と再び上昇した.新生児低血糖を伴った5例における母体妊娠後期の125I-インスリン結合率は低血糖を伴わなかった群に比し有意に高値を示した (p<0.05).後期において125I-インスリン結合率の低下が, インスリン需要量の増加に反してみられた11例中5例において遊離インスリンの上昇が認められた.
妊娠後期においてインスリン結合率の高値なものに新生児低血糖が起こりやすいという事実は, 母体インスリン抗体の胎児膵への影響を示唆するものと考えられた.