糖尿病
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糖尿病センターで治療・管理した糖尿病妊婦89症例・109分娩・110児の臨床像
佐中 真由実大森 安恵嶺井 里美東 桂子秋久 理真本田 正志大内 広子平田 幸正
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1983 年 26 巻 10 号 p. 995-1002

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抄録

近年, 発症年齢の若い糖尿病妊婦が増加し, 10年前とはその臨床像も変化してきた.わたくしたちは, 昭和39年2月から57年3月までの約18年間に, 糖尿病妊婦89症例, 109分娩, 110児を経験したので, その臨床像を解析し, 経年的な変化を検討した.
18年間における総分娩数は8804例で, 糖尿病妊婦分娩例の頻度は1.23%であった.平均糖尿病発症年齢は23.2歳, 平均糖尿病罹病期間は5.9年であり, 15歳以下で糖尿病を発症し, 罹病期間の長い糖尿病妊婦が増加する傾向にあった.この89症例のうちType I糖尿病は26例 (29.2%), Type II糖尿病は63例 (70.8%) と, Type II糖尿病妊婦が圧倒的に多かったが, 昭和50年以後Type I糖尿病妊婦が増加する傾向にあった.妊娠中の糖尿病の治療は, インスリン治療が74.3%と最も多かった.糖尿病性網膜症を合併した妊婦は48.6%と多く, 約半数に悪化傾向が認められた.妊娠前から腎症を合併していた妊婦は1例, 妊娠を契機に腎症の合併を促進したと考えられるものが2例, 産後3.5年で血液透析を施行しているものが1例いた.また無症候性細菌尿を合併していたものが17.4%と多かった.
平均分娩時期は39.3週, 分娩様式は帝王切開が48.6%と約半数をしめた.
周産期死亡率は5.6%であり, 最近子宮内胎児死亡はなくなり, 先天奇形による死亡が増加してきている.妊娠37週以後に生まれた児の平均生下時体重は34389であったが, HFDが33.6%, 4kg以上の巨大児が12名いた.先天奇形は16.4%, 新生児合併症としては低血糖が36.2%と高率に認められた.

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