抄録
半年以上血糖コントロール状態および治療法が変わらなかった糖尿病者96名と非糖尿病者44名を対象とし動脈硬化度を検査した.動脈硬化度の判定には, 大動脈脈波速度 (APWV), 心電図ST変化 (STECG) と大動脈弓石灰化 (AAC) を調べた.年齢, 性, 体重指数, 糖尿病の有無, 糖尿病罹病年数, 糖尿病治療法, 血清総コレステロール, HDLコレステロール, 中性脂肪, クレアチニン, 血糖コントロール状態, 尿蛋白, 高血圧症の合併の有無, 血圧 (APWV, ECG検査時), ET/PEP, 心筋梗塞・狭心症・脳血管障害の既往の有無の諸因子と3つの動脈硬化検査所見との関連性を分析し次の結果を得た (1) 単相関, 偏相関分析でAPWV, ST-ECG, AACは糖尿病単独因子と有意な相関はなかった。(2) 糖尿病群のAPWVは食餌療法, 経口剤, インスリン群の順に高値であり, 食餌療法とインスリン群間で有意差があった. (3) 糖尿病, 非糖尿病両群のST-ECGについて年齢と正の, HDLコレステロールと負のそれぞれ有意な相関を示し, さらに女性において有意にST変化が強かった. (4) AACは年齢と正の有意な相関を示した. (5) APWVとTGは単相関および偏相関分析で有意な正の相関を示した.
さらにこれらの分析より, 糖尿病者の動脈硬化は, 肥満の是正, 適切な食餌療法がなされており, さらに糖質, 脂質代謝が正常化していると, 正常人と差がなくなることが予測された.