糖尿病
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多発奇形を伴った骨形成不全のある児を出産後計画妊娠により正常児を得た9歳発症糖尿病の1例
秋久 理眞大森 安恵嶺井 里美清水 明実東 桂子佐中 真由実本田 正志平田 幸正大内 広子
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1986 年 29 巻 10 号 p. 937-942

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抄録
糖尿病のコントロール不良のまま妊娠し多発奇形を伴う先天性骨形成不全症のある児を出産したが, その後の計画妊娠により正常児を得た9歳発症糖尿病の1例を報告する.
主婦. 9歳で糖尿病と診断され, インスリン治療をうけていた. インスリン量は1日50~80単位であったが, 血糖コントロールは良好でなかった. 昭和56年4月 (23歳), 第1回妊娠11週で当センターへ紹介され初診. 初診時, 空腹時血糖196mg/dl, HbA1 11.6%と血糖コントロールは不良であった. 妊娠までの罹病期間は14年であったが糖尿病性網膜症は右眼のみScott [Ia] で, 腎症は認めなかった. ただちに入院, 食事療法の徹底, 1日4回のインスリン頻回注射で血糖コントロールは改善した. 退院後の血糖コントロールはほぼ良好であり, 妊娠38週で女児を自然娩出したが, 児は多発奇形を伴う骨形成不全で自発呼吸なく生後30分で死亡した.
第1子出産後は血糖自己測定をおこないながら血糖の正常化に努め, 計画妊娠により第2子を受胎. その後の糖尿病のコントロールはHbA1 8.4~9.4%であった. 妊娠37週に自然分娩で女児を娩出. 児は体重2707gの正常児で合併症は認められなかった.
本症例は9歳発症の小児糖尿病分娩例でありながら細小血管合併症がほとんどなく, 正常妊娠経過をとった症例であり, 奇形を予防するために計画妊娠の重要さを示す貴重な症例といえる.
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© 社団法人 日本糖尿病学会
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