糖尿病
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梗塞心筋, 健常心筋の収縮性に与えるインスリンの影響
岩坂 壽二高橋 延行小川 明男木村 穣杉浦 哲朗斧山 英毅稲田 満夫
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1986 年 29 巻 9 号 p. 805-810

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抄録

インスリンの心ポンプ機能への影響を検討するため, 陳旧性前壁心筋梗塞症35例を対象にRI angiocardiographyによる左室駆出率 (GEF), 梗塞部駆出率 (IEF), 健常部駆出率 (NEF), 左室拡張末期容量 (EDV) を測定し, またほぼ同時期に75gr.ブドウ糖負荷試験を行い, 血糖値 (BS), 血清immmoreactive insulin (IRI) を測定し, その総和、ΣBS, ΣIRIを算出した.Σ8S, ΣBS/ΣIRIはGEF, NEF, IEF, EDVと特に一定の関係を認めなかった.しかしΣIRIはGEF, NEF, IEF, EDVと次式のごとき2次回帰を示し, 統計学上も有意であった.
GEF=-41.4× (logΣIRI) 2+440.6×logΣIRI-1124.6
NEF=-42.5× (logΣIRI) 2+448.3×logΣIRI-1122.3
IEF=-33.4× (logΣIRI) 2+356.0×logΣIRI-914.2
EDV=89.3× (logΣIRI) 2-950.0×logΣIRI+2623
すなわちΣIRIが健常者と同程度の200μU/ml前後にある状態では, NEF, IEFともに最も良好に保たれ, EDVも小であった.
以上, 血中インスリンはある範囲内では心筋収縮性を梗塞部, 残余機能心筋を問わず高め, 維持し, 心筋保護作用を発揮すると考えた.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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