糖尿病
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トリプシン処理脂肪細胞におけるインスリン受容体結合とインスリン作用の変化
Insulin-sensitive Phosphodiesteraseによる分析
鈴木 隆牧野 英一金塚 東吉田 尚
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1987 年 30 巻 2 号 p. 133-139

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抄録

トリプシンを脂肪細胞と孵置すると細胞表面のインスリン受容体あるいはその極めて近傍が限定分解される.このために125I-インスリン結合は, 低濃度 (10μg/ml) トリプシン処理脂肪細胞では軽度低下し, 高濃度 (1mg/ml) トリプシン処理脂肪細胞ではほぼ完全に消失した.Scatchard解析によりこの結合の低下はインスリン受容体数の低下に起因するものであると考えられた.Insulin-sensitive Phosphodiesterase (以下PDEと略す) のインスリンによる活性化は低濃度トリプシン処理脂肪細胞では未処理のコントロールに比し中等度低下し, 高濃度トリブシン処理脂肪細胞ではPDE活性化はほぼ完全に抑制された.PDE活性化のED50は, コントロールでは0.15nMであるのに対し低濃度トリプシン処理脂肪細胞では0.43nMであり, インスリンに対する感受性は低下していた (P<0.001).またインスリンによるPDE活性化の最大反応もコントロールで基礎活性の260%であるのに対し, 低濃度トリプシン処理脂肪細胞では200%であり最大反応も低下していた (P<0.001).この結果より低濃度トリプシン処理脂肪細胞ではインスリン受容体数の減少によりインスリン感受性の低下が生じたと考えられた.インスリンに対する最大反応の低下は, 低濃度トリプシン処理脂肪細胞においてはインスリン受容体とPDE活性化系のcoupling機構には障害がないものと推定され, spare receptorの減少が関与している可能性が示唆された.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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