糖尿病
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30 巻, 2 号
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  • 上田 英雄
    1987 年 30 巻 2 号 p. 103
    発行日: 1987/02/28
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
  • 安静時心拍変動係数 (CVR-R) との関連について
    大星 隆司
    1987 年 30 巻 2 号 p. 105-112
    発行日: 1987/02/28
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    インスリン非依存型糖尿病 (NIDDM) 患者で運動療法の適応を明確化するため, 増殖性網膜症や腎機能障害のないNIDDM患者27例に14~15時間絶食下で標準体重1kg当たり1ワットの自転車エルゴメーター運動を20分問負荷し, 代謝, 内分泌および交感神経反応 (心拍数, 尿カテコラミン (CA)) を検討した.
    NIDDM患者全体について重回帰分析をおこなった結果, 通常呼吸時の心拍変動係数 (CVR-R) と血清遊離脂肪酸 (FFA), 3-ヒドロキシ酪酸 (3-OHBA), コルチゾール (cortisol) 濃度およびクレアチニンクリアランス (Ccr) で補正した尿ノルアドレナリン (NA) 排泄量の変化がそれぞれ相関した.
    次にNIDDM群よりCVR-R値2%未満のA群 (n=7) とCVR-R値2%以上のB群 (n=9) を選ぶと, 両群間で年齢, body mass index (BMI) および絶対的運動強度 (ワット) に差はなかったが, A群で1) 心拍数の回復およびCA反応が遅延し, 2) FFAは漸増し, その運動終了後30分 (“50分”) の値はB群より高値の傾向で, 3) 血漿グルカゴン (IRG) 反応は増大し, 4) cortisolの運動終了直後 (“20分”) の値はB群より高値であった.
    心拍変動係数低下のあるNIDDM患者では運動時の交感神経反応は遅延し, IRGやcortisolはこの遅延を部分的に代償するために増加した可能性がある. また運動後のNA値がA群でより高かったことは血管合併症の進展や突然死の危険性がより高いことを裏づけている.
  • 森 豊, 須甲 松信, 奥平 博一, 松葉 育郎, 鶴岡 明, 佐々木 温子, 西村 正彦, 信田 隆夫, 種瀬 富男, 池田 義雄
    1987 年 30 巻 2 号 p. 113-119
    発行日: 1987/02/28
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    サイクロスポリン (Cs) によるNODマウスのInsulitisおよび糖尿病発症予防効果におけるsupprcssorT細胞の関与を検討するH的でCs投与NODマウス脾細胞移入実験を行った. 移入細胞としてI群;糖尿病発症直後雌NODマウスの脾細胞, II群;I群に生後100日齢のCs投与雌NODマウスの脾細胞を加えたもの (Cs25mg/kgを隔日に40日間投与), III群;I群に生後240日齢以上Cs投与雌NODマウスの脾細胞を加えたもの (Cs25mg/kgを隔日に40日間投与), IV群;生後30日齢の雌NODマウス (対照群) の脾細胞であり, Recipientは全群とも生後30日齢の雌NODマウスで行った. 血糖は4週問を通じて各群とも有意な上昇を認めなかったが, 脾細胞移入4週後の膵ラ氏島リンパ球浸潤の程度をGrade 1~3のScoreで評価すると, I群, III群はIV群に比して有意にリンパ球浸潤が亢進しており, またII群はI群に比して有意に抑制されていた. すなわち1) 糖尿病発症直後の雌NODマウス脾細胞を若齢雌NODマウスに移入しても糖尿病を早期に誘発することはできなかったがInsulitisの程度は有意に増強された. 2) Cs投与NODマウス脾細胞には糖尿病発症直後雌NODマウス脾細胞移入によるInsulitis増強を抑制する効果が認められた. 3) この抑制効果は生後240日齢以上のCs投与NODマウス脾細胞には認められなかった. 以上の結果よりCs投与によるNODマウスのInsulitis抑制効果にはhelperT細胞活性の阻害以外にもsuppressor機構の関与していることが示唆された.
  • 磯谷 治彦, 北沢 明人, 北岡 治子, 池上 陽一, 間島 毅彦, 馬嶋 素子, 坂根 貞樹, 三木 京子, 高松 順太, 茂在 敏司
    1987 年 30 巻 2 号 p. 121-126
    発行日: 1987/02/28
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者において尿中NAGが増加していることはよく知られているが, その臨床的意義は十分明らかにされていない.糖尿病患者109例を対象に, 尿中NAGの増加との関連が予想された臨床所見9項目 (年齢, 罹病期間, 空腹時血糖, HbA1c, 蛋白尿, BUN, s-creatinine, s-β2 microglobulin, 糖尿病性網膜症) について多変量解析を行った.その結果, 糖尿病患者の尿中NAGはHbA1C, 蛋白尿, 年齢の3因子と有意の偏相関 (p<0.01) を示し, なかでもHbA1cとの関連が強く認められた.この成績に基づき尿中NAGが血糖コントロールの時間的経過とどのような関係にあるのかをみるために外来患者84例, 入院患者15例を対象として分析した.外来糖尿病患者のうち2か月間の経過でHbA1cが明らかに増加あるいは減少した症例は20例あり, これらの例では尿中NAGはその変動に一致して有意に増加あるいは減少した.またHbA1cが変化を示さなかった残りの64例では尿中NAGの変動はみられなかった.
    入院患者15例中10例では入院後1週間にて血糖コントロールの急激な改善が得られた.これらの例では全例, 尿中NAGは入院4週間後に正常化した.一方血糖コントロールの改善が得られなかった残りの5例では尿中NAGの明らかな変動はみられなかった.
    経口75g糖負荷試験における血糖の上昇に対し, 尿中NAGは増加しなかった.
    以上の成績から糖尿病患老における尿中NAGは蛋白尿の程度のみならず高血糖に基づく何らかの代謝障雷を反映して, 可逆的に変動するものと考えられた.
  • 筒井 理裕, 小沼 富男, 落合 滋, 朴 明俊, 遅野井 健, 武部 和夫
    1987 年 30 巻 2 号 p. 127-132
    発行日: 1987/02/28
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    糖尿病性血管障害の発症, 進展機序のひとつに血小板の機能異常, 特に脂質過酸化亢進状態が注目されているが, そのscavcngcrであるビタミンE (Vit. E) の血小板内濃度について検討した, II型糖尿病患者72名 (DM群) の血小板内Vit. E濃度は0.85±0.05μg/109 platelcts (Mean±SE) であり, これは健常対照者30名 (C群) での0.53±0.03μg/109plateletsと比べて有意 (p<0.001) に高値であった. また血漿Vit.E濃度もDM群 (1.14±0.04mg/dl) がC群 (0.91±0.03mg/dl) と比べて有意 (p<0.001) に高値であった. DM群においてこれら血小板と血漿のVit.E濃度の間にはr=0.336の有意 (p<0.001) な正の相関関係が認められた.
    さらにDM群において, 糖尿病病態と血小板内Vit. E濃度との関連についても検討を加えた. 糖尿病の罹病期間, 治療法, 血糖コントロール状態のそれぞれと, 血小板内Vit. E濃度との間には有意な関連がみられなかった.一方, 糖尿病の血管合併症との関連では, 蛋白尿陽性例での血小板内Vit. E濃度 (1.14±0.19μg/109platclets) は陰性例 (0.77±0.04μg/109platelets) と比べて有意 (p<0.01) に高値であった.また蛋白尿陽性例のなかでは, 虚血性心病変合併例での血小板内Vit.E濃度 (0.62±0.08μg/109platclets) が非合併例 (1.40±0.24μg/109platelets) と比べて有意 (p<0.05) に低値であった.
  • Insulin-sensitive Phosphodiesteraseによる分析
    鈴木 隆, 牧野 英一, 金塚 東, 吉田 尚
    1987 年 30 巻 2 号 p. 133-139
    発行日: 1987/02/28
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    トリプシンを脂肪細胞と孵置すると細胞表面のインスリン受容体あるいはその極めて近傍が限定分解される.このために125I-インスリン結合は, 低濃度 (10μg/ml) トリプシン処理脂肪細胞では軽度低下し, 高濃度 (1mg/ml) トリプシン処理脂肪細胞ではほぼ完全に消失した.Scatchard解析によりこの結合の低下はインスリン受容体数の低下に起因するものであると考えられた.Insulin-sensitive Phosphodiesterase (以下PDEと略す) のインスリンによる活性化は低濃度トリプシン処理脂肪細胞では未処理のコントロールに比し中等度低下し, 高濃度トリブシン処理脂肪細胞ではPDE活性化はほぼ完全に抑制された.PDE活性化のED50は, コントロールでは0.15nMであるのに対し低濃度トリプシン処理脂肪細胞では0.43nMであり, インスリンに対する感受性は低下していた (P<0.001).またインスリンによるPDE活性化の最大反応もコントロールで基礎活性の260%であるのに対し, 低濃度トリプシン処理脂肪細胞では200%であり最大反応も低下していた (P<0.001).この結果より低濃度トリプシン処理脂肪細胞ではインスリン受容体数の減少によりインスリン感受性の低下が生じたと考えられた.インスリンに対する最大反応の低下は, 低濃度トリプシン処理脂肪細胞においてはインスリン受容体とPDE活性化系のcoupling機構には障害がないものと推定され, spare receptorの減少が関与している可能性が示唆された.
  • Glibenclamideとの比較
    間島 毅彦, 北沢 明人, 北岡 治子, 池上 陽一, 磯谷 治彦, 坂根 貞樹, 馬嶋 素子, 三木 京子, 高松 順太, 茂在 敏司
    1987 年 30 巻 2 号 p. 141-145
    発行日: 1987/02/28
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    GliclazideとGlibenclamideの等価川量は, 前者40mgに対し後者は1.25mgとも2.5mgともいわれている.著者らはGlibenclamldeからliclazideへ投薬を変更し, その際の血糖コントロール状態の変動を観察した.Clibenclamide2.5~5.0mg朝1回の投与で4か月以上安定した血糖コントロール状態にあるII型糖尿病患者20例を対象とし, Glibenclamide2.5mgに対しGlzclazide40mgに相当するよう薬剤を変更し, その前後をとおし8か月間にわたり1か月ごとに空腹時血糖 (FPG), HbA1およびHbA1cの変動を観察した.
    (1) FPGはGlibenclamide投与中平均146±21mg/dlであったが, Gliclazideに変更1か月後157±32mg/dl, 4か月後には170±31mg/dlといずれも有意に上昇 (p<0.05, p<0.01) した.
    (2) 一方HbAiとHbA1cはGlibenclamide投与中それぞれ平均10.6±1.1%, 7.1±1.0%, Gliclazideに変更4か月後でもそれぞれ10.5±1.5%, 7.0±1.2%で, 全経過を通じて明らかな変動を示さなかった.
    (3) GlibenrlamideよりGliclazideに投薬を変更することにより, 20例中9例にFPGの上昇が認められたが, HbA1cが上昇したのは20例中4例に過ぎず, 逆に5例でHbA1cが下降した.
    以上より両薬剤の血糖降下作用には何らかの違いがあることが示唆された.またHbAlcに変動がみられなかったことから, Gliclazide40mgの等価用量はGlibenclamide2.5mgに相当すると考えられた.
  • 脇 昌子, 洪 秀樹
    1987 年 30 巻 2 号 p. 147-154
    発行日: 1987/02/28
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    血中noradrenaline (NA) 濃度は交感神経活動の指標と考えられている.今回われわれは, 75gブドウ糖経口負荷試験 (OGTT) 時の血中NA濃度の変化を, 自律神経障害のないインスリン非依存性糖尿病 (NIDDM: D群10人) 患者と正常耐糖能者 (C群8人) を対象に検討した.OGTT前後に血糖, 血中インスリン (IRI), C-ペプチド (CPR), NEFA, カリウム, NA, adremlineの濃度を測定し, 次の結果を得た。(1) C群ではOGTT後30分を頂値として血中NA濃度が増加したがD群にはこのような増加反応がみられず, 両群の血中NA反応に有意な差を認めた。(2) C, D群を合わせた検討 (n=18) では, OGTT後30分における, IRI増加分 (Δ IRI 30min) とNA増加分 (Δ NA 30min) の間には相関係数r=0.52 (P<0.05), insulinogenic index (Δ IRI/Δ Glucose) とΔ NA 30minの間にはr=0.70 (p<0.01) と, インスリン分泌能とNA濃度増加との問に正の相関を認めた. (3) D群のうち4人には2週間の食事療法後に再度OGTTを行った, そのうち, インスリン分泌能の改善した3人ではΔ NA 30minも改善したが, 残りの1人ではインスリン分泌能, Δ NA 30minともに低いままであった.
    以上より, NIDDMではOGTT後におこるべき血中NA増加反応, もしくは交感神経活動が, そのインスリン分泌能低下に伴って二次的に低下していると考えられた.
  • 星山 俊潤, 直 克則, 上田 信行, 久保田 昌詞, 向井 光佐子, 鮴谷 佳和, 七里 元亮, 鎌田 武信
    1987 年 30 巻 2 号 p. 155-160
    発行日: 1987/02/28
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    晩期の糖尿病性腎症における必須アミノ酸療法の効果および適応時期についてrerrospectiveな検討を行った.対象は1) 必須アミノ酸非投与群 (n=6), 2) 必須アミノ酸療法有効群 (n=4), 3) 必須アミノ酸療法無効群 (n=8) の3群に分けられた.非投与群, 有効群および無効群の透析導入までの期間は, それぞれ, 9.4±3.2ヵ月, 16.5±4.4ヵ月, 4.3±3.4ヵ月であり, 有効群と非投与群の間に有意差を認めた.有効群と無効群では, 必須アミノ酸療法開始時期における血清クレアチニン (3.6±1.3mg/dl, 6.9±1.9mg/dl (p<0.05)), BUN (53±16.0mg/dl, 69±7.1mg/dl (p<0.05)) に有意差を認めたが, 血圧・1日尿蛋白量・空腹時血糖・HbA1c・インスリン量などに有意差は認めなかった.血清クレアチニンの逆数値の回帰直線は, 必須アミノ酸療法開始前後で, 有効群では平均勾配が有意に小となった.以上の結果より, 1) 糖尿病性腎症においても必須アミノ酸療法は有効である.しかしながら, 既に血清クレアチニン値が, 5.0mg/dl以上となった時期では, 必須アミノ酸療法による腎不全遅延効果は期待し難い.2) 必須アミノ酸療法の開始時期としては, 血清クレアチニン値が2.0mg/dlをこえる早期の腎機能障害を疑う時期が望ましいことが示唆された.
  • 猪股 茂樹, 井上 正則, 大沢 佳之, 伊藤 万寿雄, 正宗 研
    1987 年 30 巻 2 号 p. 161-166
    発行日: 1987/02/28
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    健常対照22例 (年齢38.2±11.9歳 (M±SD)〈18-62歳〉) と腎不全のないインスリン非依存型糖尿病67例 (年齢49.1±10.8歳〈15-66歳〉, 罹病期間10.1±5.8年〈0.3-25年〉, GFR93.0±20.5ml/min〈50-166ml/min〉, 持続性蛋白尿9例, 網膜症36例) を対象に静脈性腎盂撮影を行い腎の大きさをSimonの方法によりrenal ratioとして表した.さらに糖尿病19例 (蛋白尿陰性16例, 持続性蛋白尿3例) に腎生検を行い, 腎の大きさと糸球体びまん性病変 (Gellman分類による) との関係を検討し以下の成績を得た.
    1) Renal ratioは対照群3.15±0.24, 糖尿病群3.38±0.32で糖尿病群で有意に高値であった (p<0.01).
    2) 対照群のrenal ratioに基づいて糖尿病群の腎の大きさをS ([M-SD]≧), M ([M-SD] ~ [M+SD]), L ([M+SD]) の3群にわけると, S群4例, M群32例, L群31例でM, L群が多かった.持続性蛋白尿の合併頻度はS群0%, M群6.3%, L群22.2%とL群で高い傾向を示した (0.10<p<0.05).
    3) 腎生検 (M群7例, L群12例) の結果, M群は全例糸球体びまん性病変II度以下でありL群の半数は糸球体びまん性病変III度以上であった.また, III度以上の群でII度以下の群より腎が有意に肥大していた (p<0.05).
    以上から, NIDDMでは持続性蛋白尿へ進展する症例は腎肥大のない群より腎肥大のある群から生まれる可能性が高いことが示唆された.
  • 藤本 順子, 弘田 明成, 畑 美智子, 近藤 まみ子, 島 健二
    1987 年 30 巻 2 号 p. 167-173
    発行日: 1987/02/28
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    歳から79歳までの各年齢層の健常人1,261例について心電図R-R間隔変動を指標とした自律神経機能検査を行い, IE常参考値および標準予測式を作成した.
    安静・時, 深呼吸時, バルサルバ試験, 起立試験での心電図R-R間隔をMEコマーシャル製のオートノミックR-100を使用して連続する100心拍で計測し, 平均値, 標準偏差, 変動係数, 最大値と最小値の比などを検討した.
    自律神経機能検査成績に性差は認められなかったが, 年齢と強い相関が認められたので年齢別の正常参考値をパラメトリック法で算出した.安静時および深呼吸時の100心拍R-R間隔の標準偏差, 変動係数および最大値と最小値の比は加齢に伴って有意に減少した (P<0.01).
    また多変量解析法により自律神経機能検査の標準予測式を作成し, 信頼の高い (P<0.01) 予測式を得た
  • 岩崎 直子, 吉野 博子, 大橋 博, 笠原 督, 平田 幸正, 矢野 伸樹
    1987 年 30 巻 2 号 p. 175-180
    発行日: 1987/02/28
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    若年者に発症する糖尿病の中にもインスリン依存型糖尿病の他にインスリン非依存型糖尿病が存在する.後者の中に1975年, TattcrsallとFajansらが提唱したmaturity onset type diabetes of the young (以下MODYと略す) という病型に属するものが含まれる.MODYは25歳未満で発症し, 少なくとも2年はインスリンを使用することなくコントロールが可能な糖尿病で, 同胞の半数に糖尿病を認め, 3代に渡る優性遺伝を有するという.今日まで欧米で報告されてきたMODY例は, 比較的細小血管症の合併が少なく進行しにくいとされたが, 私どもはMODYと考えられる症例で, しかも進行の速い細小血管症を合併する症例を経験した.症例は11歳で糖尿病を発見された女性で, 9年間は食事療法のみで治療されていた.その後インススリン療法を加えられ, 現在30歳で, 増殖性網膜症と腎症を有している.この発端者の母親は16歳で, 母方の祖父は30歳で糖尿病を発見された.また発端者の妹は17歳のときに, 糖尿病が網膜症とともに発見され, 28歳の現在網膜症は増殖型で腎症も合併している.
    結論として今回報告した症例は25歳未満で糖尿病となったものであり, 細小血管症を早期に起こしてくるNIDDMの優性遺伝を有するものといえた.
  • 井上 薫, 稙田 太郎, 中川 瑞穂, 田添 明彦, 小野 弘, 井口 登与志, 梅田 文夫, 井林 博
    1987 年 30 巻 2 号 p. 181-185
    発行日: 1987/02/28
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    高度の糖尿病性神経障害に使用したCarbamazepine (CBM) によりSIADHの顕性化した1例を報告する.患者は55歳女性.入院2年前に糖尿病と診断され, 6カ月前よりるい痩著明となり, 家事不能となった.FBS高値 (350mg/dl) でインスリン治療 (Lente20単位/日) が開始されたが, その後両下肢のジンジン感と疼痛が増強しCBMが有効であった.入院時所見は143cm, 28kg.血圧120/70, FBS150mg/dl, HbA19.6%, 尿蛋白 (-).白内障 (+), 神経学的に両下肢の知覚および腱反射はすべて低下ないし消失し, MCV32.4m/scc, SCV誘発不能.R-Rテスト2.3拍/分, 腓腹神経生検で有髄, 無髄神経線維の高度の脱落を認めた.腎機能および甲状腺, 副腎皮質機能は正常.血清Naは常に低下 (127~131mEq/l), 水負荷試験で尿浸透圧 (340mOsm/l以上) は血漿浸透圧 (259mOsm/l以下) よりも常に高値で, かつADHの抑制を認めなかった.また低Na血症にもかかわらず, 尿中Na排泄量の減少を欠き, むしろ高値を示した.以上の成績はいずれもSIADHに合致する所見である.本例でとくに興味深い所見は, CBM中止後約1カ月間にわたり低Na血症が持続し, さらに血清Naが正常化した時点 (CBM中止2ヵ月後) の水負荷試験でなおADH分泌異常と水利尿不全を認めた点である.本症例は高度の糖尿病性神経障害とADH分泌異常との関連を示唆する興味ある症例と考える.
  • 吉岡 成人, 岩本 安彦, 松田 文子, 葛谷 健
    1987 年 30 巻 2 号 p. 187-189
    発行日: 1987/02/28
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    A specific and simple radioimmunoassay was developed for human proinsulin. Antiserum against human proinsulin was produced in guinea pigs immunized with an emulsion of antigen and Freund's adjuvant. Only one out of six guinea pigs produced proinsulin-specific antiserum that did not crossreact with human insulin or C-peptide. A double antibody method, using anti-guinea pig γ-globulin rabbit serum as a second antibody, was used to separate bound and free 125I-proinsulin in the reaction mixture. With this radioimmunoassay, it was possible to quantify directly without extracion 0.003 pmol/ml of circulating human proinsulinin serum. The mid-range (IC 50) of the assay was 0.075 pmol/ml. The mean intra-and interassay coefficients of variation were 5.5% and 9.8%. The recoveries of proinsulin added to serum were in the range 92-119%. The normal fasting proinsulin level in serum was 0.008±0.003pmol/ml, increasing gradually after a 100-g oral glucose load, and reached a peak level of 0.021±0.006 pmol/ml after 120 min.
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