1987 年 30 巻 2 号 p. 147-154
血中noradrenaline (NA) 濃度は交感神経活動の指標と考えられている.今回われわれは, 75gブドウ糖経口負荷試験 (OGTT) 時の血中NA濃度の変化を, 自律神経障害のないインスリン非依存性糖尿病 (NIDDM: D群10人) 患者と正常耐糖能者 (C群8人) を対象に検討した.OGTT前後に血糖, 血中インスリン (IRI), C-ペプチド (CPR), NEFA, カリウム, NA, adremlineの濃度を測定し, 次の結果を得た。(1) C群ではOGTT後30分を頂値として血中NA濃度が増加したがD群にはこのような増加反応がみられず, 両群の血中NA反応に有意な差を認めた。(2) C, D群を合わせた検討 (n=18) では, OGTT後30分における, IRI増加分 (Δ IRI 30min) とNA増加分 (Δ NA 30min) の間には相関係数r=0.52 (P<0.05), insulinogenic index (Δ IRI/Δ Glucose) とΔ NA 30minの間にはr=0.70 (p<0.01) と, インスリン分泌能とNA濃度増加との問に正の相関を認めた. (3) D群のうち4人には2週間の食事療法後に再度OGTTを行った, そのうち, インスリン分泌能の改善した3人ではΔ NA 30minも改善したが, 残りの1人ではインスリン分泌能, Δ NA 30minともに低いままであった.
以上より, NIDDMではOGTT後におこるべき血中NA増加反応, もしくは交感神経活動が, そのインスリン分泌能低下に伴って二次的に低下していると考えられた.