糖尿病
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糖尿病性腎症による腎不全に対する必須アミノ酸療法の有効性の検討
星山 俊潤直 克則上田 信行久保田 昌詞向井 光佐子鮴谷 佳和七里 元亮鎌田 武信
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1987 年 30 巻 2 号 p. 155-160

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抄録

晩期の糖尿病性腎症における必須アミノ酸療法の効果および適応時期についてrerrospectiveな検討を行った.対象は1) 必須アミノ酸非投与群 (n=6), 2) 必須アミノ酸療法有効群 (n=4), 3) 必須アミノ酸療法無効群 (n=8) の3群に分けられた.非投与群, 有効群および無効群の透析導入までの期間は, それぞれ, 9.4±3.2ヵ月, 16.5±4.4ヵ月, 4.3±3.4ヵ月であり, 有効群と非投与群の間に有意差を認めた.有効群と無効群では, 必須アミノ酸療法開始時期における血清クレアチニン (3.6±1.3mg/dl, 6.9±1.9mg/dl (p<0.05)), BUN (53±16.0mg/dl, 69±7.1mg/dl (p<0.05)) に有意差を認めたが, 血圧・1日尿蛋白量・空腹時血糖・HbA1c・インスリン量などに有意差は認めなかった.血清クレアチニンの逆数値の回帰直線は, 必須アミノ酸療法開始前後で, 有効群では平均勾配が有意に小となった.以上の結果より, 1) 糖尿病性腎症においても必須アミノ酸療法は有効である.しかしながら, 既に血清クレアチニン値が, 5.0mg/dl以上となった時期では, 必須アミノ酸療法による腎不全遅延効果は期待し難い.2) 必須アミノ酸療法の開始時期としては, 血清クレアチニン値が2.0mg/dlをこえる早期の腎機能障害を疑う時期が望ましいことが示唆された.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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