糖尿病
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インスリン非依存型糖尿病にみられる腎肥大と腎病変との関連
猪股 茂樹井上 正則大沢 佳之伊藤 万寿雄正宗 研
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1987 年 30 巻 2 号 p. 161-166

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抄録

健常対照22例 (年齢38.2±11.9歳 (M±SD)〈18-62歳〉) と腎不全のないインスリン非依存型糖尿病67例 (年齢49.1±10.8歳〈15-66歳〉, 罹病期間10.1±5.8年〈0.3-25年〉, GFR93.0±20.5ml/min〈50-166ml/min〉, 持続性蛋白尿9例, 網膜症36例) を対象に静脈性腎盂撮影を行い腎の大きさをSimonの方法によりrenal ratioとして表した.さらに糖尿病19例 (蛋白尿陰性16例, 持続性蛋白尿3例) に腎生検を行い, 腎の大きさと糸球体びまん性病変 (Gellman分類による) との関係を検討し以下の成績を得た.
1) Renal ratioは対照群3.15±0.24, 糖尿病群3.38±0.32で糖尿病群で有意に高値であった (p<0.01).
2) 対照群のrenal ratioに基づいて糖尿病群の腎の大きさをS ([M-SD]≧), M ([M-SD] ~ [M+SD]), L ([M+SD]) の3群にわけると, S群4例, M群32例, L群31例でM, L群が多かった.持続性蛋白尿の合併頻度はS群0%, M群6.3%, L群22.2%とL群で高い傾向を示した (0.10<p<0.05).
3) 腎生検 (M群7例, L群12例) の結果, M群は全例糸球体びまん性病変II度以下でありL群の半数は糸球体びまん性病変III度以上であった.また, III度以上の群でII度以下の群より腎が有意に肥大していた (p<0.05).
以上から, NIDDMでは持続性蛋白尿へ進展する症例は腎肥大のない群より腎肥大のある群から生まれる可能性が高いことが示唆された.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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