1987 年 30 巻 8 号 p. 715-721
糖尿病心筋のグルコース代謝を明らかにする目的で, ストレブトゾトシン (STZ) 糖尿病ラット心筋におけるグルコース取り込み, 乳酸生成,[1-14C]-glucoscの酸化について検討するとともに, coenzymc Q10 (CoQ10) 投与の影響について検討した.
体重120gのウイスター雄ラットにSTZ 60mg/kgを投与し7日間飼育したもの (STZ群), STZ投与後CoQ1010mg/kgを連日投与したもの (STZ+CoQ10群) および対照ラットについて心を摘出しLangendorffモデルの灌流実験を行った. 1mMグルコースおよび [1-14C]-glucoscを含む灌流液を用いて2ml/minの流速で30分間灌流した.
対照群のグルコース取り込みは心湿重量当たり9.0±1.4μmol/30min/g (mcan±SD), 乳酸生成は40.5±12.4μmol/30min/g, グルコース酸化は39.5±4.0nmol/30min/gであったが, STZ群ではそれぞれ4.4±2.6μmol/30min/g, 25.0±6.8μmol/30min/g, 22.0±7.8nmol/30min/gといずれも有意な (P<0.01) 低下を示した. STZ+CoQ10群ではグルコース取り込みは4.6±2.8μmol/30min/g, 乳酸生成は23.7±4.8μmol/30min/gでそれぞれSTZ群と差を認めなかったが, グルコース酸化は30.7±5.2nmol/30mil/gとSTZ群に比し有意に高かった (p<0.05).
今回の実験からSTZ糖尿病ラット心筋のグルコース取り込み, 嫌気的解糖および好気的解糖はともに著明に低下していることが示され, またCoQ10投与により糖尿病ラット心筋におけるグルコース酸化が改善される吋能性が示唆された.