糖尿病
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Painless Thyroiditisとともに糖尿病を発症した1例
袴田 睦伊藤 光泰大橋 弘幸仁瓶 禮之
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キーワード: 無痛性甲状腺炎, 糖尿病
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1987 年 30 巻 8 号 p. 753-759

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抄録

Painless thyroiditis (以下, PT) 発症とともに臨床的に糖尿病を発症した1例を報告した. 51歳女性で入院2ヵ月前より口渇, 多飲多尿, 動悸が出現し体重減少を認めた. 入院時, 無痛性のびまん性甲状腺腫を触知した. 末梢血甲状腺ホルモン値のヒ昇, 131I甲状腺摂取率の低下, 甲状腺自己抗体の上昇を認める一方, FBS 181mg/dl, HbA1c 13.5%と糖代謝異常を認めた. 短期間のβ-blocker, 経口血糖降下剤の投与にて, 甲状腺機能, 糖代謝は正常化した. 甲状腺マイクロゾーム抗体のヒ昇に伴ってTSHの一過性上昇が認められた. 経口ブドウ糖負荷試験は, 初め, インスリン分泌反応の低下を認めたが, 甲状腺機能が正常化するにしたがいインスリン分泌能は回復し, 正常血糖曲線を示した. ICA, ICSAは陰性であった. 本例において, 一過性の甲状腺機能亢進が糖代謝悪化の主因と考えられるが, PT発症に関連する免疫学的異常が, 糖尿病発症に筋かの影響を与えた可能性もあり, 今後詳細な検討が必要である.

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