抄録
原発性慢性糸球体腎炎 (以下腎炎) を合併したインスリン非依存性糖尿病 (NIDDM) 者について, 血清アンジオテンシン変換酵素 (SACE) 活性および腎機能を検討した. 対象は, 肺に異常なく, 喫煙歴のないNIDDM (糖尿病性腎症合併26例, 非合併42例), 腎炎を合併したNIDDM8例, 糖尿病を合併しない腎炎患者 (IgA腎症14例, 膜性腎症6例) および正常45例とした. 腎炎を合併したNIDDMのSACE活性は, 糖尿病性腎症群および正常群と比較して低値であった. 糖尿病性腎症の合併例では, 正常群と比較してSACE活性は高値であった. 腎疾患を合併する各群において, 糸球体濾過値 (GFR) とSACE活性の間には相関が認められなかった. 以上より, 尿蛋白陽性のNIDDMでは, 糖尿病性腎症の合併か腎炎の合併かの鑑別のため, 血清のACE活性値を検討することは有用と考えた.