1992 年 35 巻 6 号 p. 487-493
症例は70歳女性. 65歳時, 糖尿病性ケトーシスにてただちにインスリン治療開始となる. 発症間もない時点での尿中C-ペプチド排泄量は4.0~10μ9/日と膵β 細胞機能はほぼ廃絶していた. 一方, 膵外分泌障害を示す所見はみられていなかった. その後頻回インスリン療法により血糖コントロールは良好に保たれていたが, 子宮内膜癌を発症し死亡した. 剖検膵の組織学的検索では外分泌腺は比較的良好に保たれていたが, ラ氏島内の内分泌細胞は減少しており, 免疫組織染色では, α細胞およびδ細胞が残存するもののβ細胞は認められなかった. ラ氏島炎の所見は認められなかったが, リンパ球が間質から外分泌領域に浸潤しており, これらの細胞はTリンパ球が主体であった.