糖尿病
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下肢疼痛を主訴としたミトコンドリア遺伝子異常を持つ糖尿病の1例
鈴木 吉彦松岡 健平門脇 弘子赤沼 安夫門脇 孝
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1993 年 36 巻 11 号 p. 869-874

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抄録
下肢疼痛を主訴とし難聴を持つ33歳の糖尿病患者を報告する. 家族歴に母, 妹, 弟に難聴がある. 30歳の時, 高血糖昏睡で糖尿病を発病し同時期より難聴を自覚した. 糖尿病治療開始3カ月後より下肢に難治性の治療後柊痛性神経障害を起こし6カ月後より網膜症が出現した. また低身長, 心電図異常, 乳酸値とピルビン酸値上昇を認め, ミトコンドリア (以下MTと略す) のLeucyl tRNA遺伝子3243番目のA→G点変異を認めた. これよりMTの遺伝子変異による難聴を特徴とした新しいタイプの糖尿病と診断した. ただし治療後疼痛性神経障害を強く認め網膜症の進行が速い点は特異な例として注目した. これは血糖コントロール後の神経および網膜細胞内エネルギー不足がMT異常により増悪または加速された可能性もあると推察した. 以上よりこのMT異常は糖尿病誘発因千となるだけでなく合併症発症に影響する可能性もあり, 今後このような症状の患者には注意深い観察が必要である.
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© 社団法人 日本糖尿病学会
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