糖尿病
Online ISSN : 1881-588X
Print ISSN : 0021-437X
ISSN-L : 0021-437X
多発性硬化症の疑いを持つインスリン依存型糖尿病の1例
鈴木 吉彦竹内 郁男細川 和広渥美 義仁松岡 健平
著者情報
ジャーナル フリー

1994 年 37 巻 1 号 p. 31-35

詳細
抄録
糖尿病発病から数年でインスリン分泌が減少しketotic proneであることからインスリン依存型糖尿病 (以下IDDMと略す) と診断し, 経過観察中に多発性硬化症 (以下MSと略す) の疑いある病像を併発した23歳女性を報告する.MSは, 発病年齢が若いこと, 中枢神経病巣が複数あること, 他疾患を除外しうること, 症状が一過性であったことなどから疑いありと診断した.両疾患合併が疑われた報告は本邦で最初である.両疾患が合併しやすい理由には糖脂肪代謝異常による脱髄現象説, ウイルス感染説など種々の説がある.両者とも発病年齢, 性差, 地理的特徴, 発病頻度, 寛解期を有する点, 自己免疫異常機構を介した機序が考えられる点に共通性がある.本症例ではIDDMに対し疾患感受性HLA遺伝子であるDR4とMSに対するDR2を有する点は遺伝的背景を疑わせる.またMSの併発は糖尿病治療に種々の幣害を及ぼし, 通院中断や過食, 神経症に対する誤診を導くなど悪影響を認めた.
著者関連情報
© 社団法人 日本糖尿病学会
前の記事 次の記事
feedback
Top