反復する疹痛発作と多発性単神経炎型の知覚障害を呈した63歳糖尿病男性を報告する. 50歳で糖尿病と診断されたが血糖コントロールは良好だった. 58歳で疼痛を伴う単神経障害を発病し疼痛部位は神経走行にほぼ一致し, 感覚消失を伴い多発性に短期間に進行した. 一般諸検査で異常なく顕著な炎症所見はなかった. 筋電図検査で障害部位に一致し神経伝導速度低下を認め単神経障害の多発性を確認した. 腓腹神経生検では有髄神経線維密後は減少し, 神経周膜が中等度肥厚し一部高度肥厚も認め部分的に中等度の単核球浸潤を伴った. 以上の臨床経験から本例は感覚性神経周囲炎を有すると診断した. その後ステロイド投薬が奏功した点は過去の報告例と似ていたが高血糖を招き患者自ら服薬中止した点に問題を残した. 本疾患の原因機序は不明だが, 糖尿病性神経障害の多彩な病像の中で見過ごされているかもしれない. 今後多発性単神経障害を持つ例での鑑別疾患として重要と考えた.