抄録
19歳, 女性. 1977年 (3歳) 痙攣を起こし特発性副甲状腺機能低下症の診断でカルシウム剤, 活性型ビタミンD3投与開始. 91年 (16歳) インスリン依存型糖尿病発症. 19歳になっても月経が発来しないため検討を行った。乳腺発育は不良で腋毛・恥毛はまばら. HbA1c9.9%, 食後血中C-ペプチドは低値. 抗GAD抗体18100.0U/ml. 抗ラ氏島抗体は陰性. intact-PTHは測定感度以下. 抗甲状腺抗体は陽性, シンチグラムで不均一. 成長ホルモン, ソマトメジン-C, プロラクチン, ACTH, rapid ACTH testのコルチゾールに異常を認めなかった. 抗下垂体抗体・抗副腎抗体陰性. 血中エストラジオールは低値, LH-RHテストでFSHの基礎値は高値. 婦人科的検査で異常を認めず超音波検査では子宮および卵巣は萎縮状. 糖尿病と特発性副甲状腺機能低下症の合併は本邦では稀であり, 特に性腺機能低下症の合併は認めていない. また, 多腺性自己免疫症候群I型との関連についても考察した.