糖尿病
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糖尿病患者の赤血球膜における過酸化脂質2, 5, 7-cholestatrieneの同定
井上 正幸橋本 英利安保 克己
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1998 年 41 巻 7 号 p. 507-512

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抄録

29人の健康者と27人の糖尿病患者から赤血球膜脂質を抽出した. この脂質をメタノリシスで処理した後, gas chromatography-mass spectrometryで分析した. 分析の結果として, 酸化コレステロールである2, 5, 7-cholestatriene (以下Triと略す) が27人の糖尿病患者のうち23人に検出された. しかし, 健康者ではTriは検出されなかった. 糖尿病では酸化的ストレスが増大していると考えられている. この酸化的ストレスがcholesterolをTriへ酸化させたと考えられた. このTriはmethanoiysisで処理されたため, 脱水体として検出された.そのためTriは赤血球膜では7-dehydro cholesterolとして存在すると推測された.糖尿病患者のTriの相対ピーク高とHbA1c値の間には有意な相関関係は認められなかった.我々はすでにもう一つの酸化コレステロールである7-keto cholestadiene (以下KDと略す) を糖尿病患者の赤血球膜脂質から検出したと報告している. Triのピーク高はKDのそれの50%以下であるため, Triは, 中間生成物であり, さらにcholesterol-epoxideへと酸化されるであろうと推測された.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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