糖尿病
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空腹時の血漿インスリン濃度は常に低値で, グルカゴンにより著明なインスリン分泌反応が誘発されたインスリノーマの1例
新谷 保実藤中 雄一高橋 幸志伊藤 祐司加藤 修司井上 大輔松本 俊夫栗田 信浩田代 征記坂東 良美佐野 暢哉宮 恵子
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2003 年 46 巻 8 号 p. 679-684

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抄録

患者は46歳, 男性.2000年 (平成12年) 9月, 低血糖 (28mg/dl) による意識障害をきたし, 精査のため入院. 現症ではBMI 18.0kg/m2と痩せ型である他に特記所見はなかった. 空腹時血糖 (FPG) は45~56mg/dlと低値で推移したが, 血漿インスリン (IRI)の基礎値は2~3μU/mlと低く, IRI/PG比は常に0.1未満であった. 絶食試験では血糖値は30mg/dl以下に低下し, end pointでのIRI/PG比は0.096であった. グルカゴン負荷試験では10分後に血漿IRI2, 027μU/mlと著明なインスリン分泌反応が惹起され, 60~120分後に低血糖が誘発された. 腹部CT・血管造影で膵体部に1.2cmの血流に富む腫瘍が認められ, 膵腫瘍核出術を施行, 病理組織学的にインスリノーマと診断した. 本例がIRI基礎値が常に低値にもかかわらず空腹時低血糖を反復した機序は明らかでないが, グルカゴンなどへの過剰応答や患者のインスリン感受性が良好であったことなどが関与した可能性がある.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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