抄録
いろいろの微生物試料について,それぞれ1回だけの示差走査熱量測定によって,試料中の水分の相図を描く方法を示した.その相図から,細胞内の可凍水と不凍水の量を求めたところ,B.cereys胞子は,同一菌株ならびに酵母の栄養細胞よりも可凍水の量が少ないことが分った.さらに胞子中の可凍水は主としてspore coatに存在することが示唆された.このことは溶媒としての性質をもつ水分が,胞子特にcoreの部分には少ないことを意味し,胞子の休眠性ならびに抵抗性に関係しているものと考えられた.不凍水の量についても,胞子の方が栄養細胞より小さい値を示した.ファージ(T4)の不凍水の量はかなり多く,DNAとタンパク質の中間の値を示し,ファージの頭部のDNAには不凍水が多く含まれていることが示唆された.