観光学評論
Online ISSN : 2434-0154
Print ISSN : 2187-6649
「場所の力」を紡ぐ
タイ国プーケット旧市街におけるセルフ・ジェントリフィケーション
須永 和博
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ジャーナル オープンアクセス

2020 年 8 巻 2 号 p. 161-174

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抄録

近年、旧海峡植民地をはじめとするマレー半島の都市部では、「プラナカン文化」と総称される、植民地時代に形成された混淆文化や都市景観が再発見され、ノスタルジー消費の対象となっている。再発見された海峡植民地由来の諸文化は、アートやファッション、建築、料理といった様々な創造産業に取り込まれ、それらが集積する都市空間では、「ツーリズム・ジェントリフィケーション」(Gotham, 2005)と呼びうるような状況が生じている。こうした動向は、ペナン出身の中華系移民(ババ・プラナカン)によって開発されたタイ国プーケットにおいてもみられる。
従来、創造産業の集積に伴う都市再編は、貧困層をはじめとする地域住民の排除などの問題を引き起こしてきた。しかし、ツーリズム・ジェントリフィケーションをめぐる民族誌的研究の中には、こうした「創造的破壊」のみならず、地域住民が観光化に伴う都市再編に主体的に応答していく「セルフ・ジェントリフィケーション」(Herzfeld, 2017)に着目した議論も散見される。 本論文では、こうした議論に依拠しながら、タイ国プーケット旧市街における観光化に伴う都市再編のありようを微視的な視点から描き出すことを目指す。

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