観光学評論
Online ISSN : 2434-0154
Print ISSN : 2187-6649
8 巻, 2 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • その定義と、観光関連の土地利用が示す変化
    内田 奈芳美
    2020 年 8 巻 2 号 p. 123-137
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/10/29
    ジャーナル オープンアクセス
    本論では、これまでに蓄積されてきた観光のオーセンティシティの議論を踏まえ、都市のオーセンティシティとは何かを考 えることを目的とする。また、都市のオーセンティシティの議論を検証する上で、ケーススタディとして都市変容に関与する 力の中で最も勢いのある観光関連用途による土地利用を現象として分析し、現代における都市のオーセンティシティを考察した。本論ではこれらの分析から、「客観的、構築的、個人的といった異なる分類のオーセンティシティの解釈を同じ空間で許容しながら、その解釈への「目」においてはホスト/ゲストの役割が混在し、都市への長い関与の時間の中で真/偽を超えた『馴染み』の感覚を持ち、常に『再解釈』の機会/危機を内包する」のが都市のオーセンティシティであると定義した。
  • 東京とパリを例に
    荒又 美陽
    2020 年 8 巻 2 号 p. 139-159
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/10/29
    ジャーナル オープンアクセス
    本論は、東京とパリで予定されているオリンピックを事例に、メガイベントが時間を区切り、そこに向かう多様な人々の活 動を引き出すことによって、脱工業化時代の都市計画事業の大きな推進力となり、弱者の排除を生み出していることを明らか にする。東京では、国立競技場の建て替えが大きな議論を呼び起こした。論争はそこが天皇の空間であることを再認識させ、 それをもとに新たな計画はイチョウ並木と明治天皇絵画館で構成される景観を最大限邪魔しないものであることが求められた。 他方で、隣接する公営住宅で立ち退きが求められ、野宿者の排除が強行されるなど、周囲のジェントリフィケーションが急速 に進んでいる。パリにおいては、メインスタジアム周辺の都市開発事業として、選手村の予定地にある移民労働者の寮が解体 されることになり、住民には狭く、騒音のひどい建物への移転が求められる事態となった。付近の高速道路では、ランプウェ イの新設によって小学校付近の大気汚染が引き起こされようとしている。いずれの事例でも見られるのは、来訪者を中心とし た都市計画が住民生活を圧迫している状況であり、観光を主要産業と位置付ける政治のひずみが表れている。
  • タイ国プーケット旧市街におけるセルフ・ジェントリフィケーション
    須永 和博
    2020 年 8 巻 2 号 p. 161-174
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/10/29
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、旧海峡植民地をはじめとするマレー半島の都市部では、「プラナカン文化」と総称される、植民地時代に形成された混淆文化や都市景観が再発見され、ノスタルジー消費の対象となっている。再発見された海峡植民地由来の諸文化は、アートやファッション、建築、料理といった様々な創造産業に取り込まれ、それらが集積する都市空間では、「ツーリズム・ジェントリフィケーション」(Gotham, 2005)と呼びうるような状況が生じている。こうした動向は、ペナン出身の中華系移民(ババ・プラナカン)によって開発されたタイ国プーケットにおいてもみられる。
    従来、創造産業の集積に伴う都市再編は、貧困層をはじめとする地域住民の排除などの問題を引き起こしてきた。しかし、ツーリズム・ジェントリフィケーションをめぐる民族誌的研究の中には、こうした「創造的破壊」のみならず、地域住民が観光化に伴う都市再編に主体的に応答していく「セルフ・ジェントリフィケーション」(Herzfeld, 2017)に着目した議論も散見される。 本論文では、こうした議論に依拠しながら、タイ国プーケット旧市街における観光化に伴う都市再編のありようを微視的な視点から描き出すことを目指す。
  • 大橋 健一
    2020 年 8 巻 2 号 p. 175-184
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/10/29
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は、グローバル化の進展する現代都市に見られる観光に関わる現象の変質の中に観光という文脈における都市再編が持つ意味を探り、解読しようとするものである。その際、本稿では、ホテルから都市・社会を見通すという都市社会学的発想を援用する。具体的には、近代化・文明化・西洋化・都市化のシンボルとして近代日本社会に移入された「ホテル」が近代日本の都市および観光にとっていかなる社会的意味をもった施設・空間として成立してきたかを踏まえた上で、現代のグローバル化の進展と連動した都市再編の中で展開する「ホテル」の変質について検討した。特に2020年の東京オリンピック開催に伴う訪日観光者増加への対応、隣接地で進められた国家戦略特区事業の一環としての都市再生特別地区計画との連携などの流れの中、2015~2019年に行われたホテルオークラ本館の建替えという現象に着目し、そこに象徴的に現れた空間的再編成と社会的意味の変質を考察した。考察からは、グローバル化に伴う都市再編の文脈の中で、「ホテル」空間は機能的純化を加速させ、抽象度を高めていることを明らかにし、それは日本における近代としての「ホテル」の終焉を意味する一方で、グローバル化する現代都市における文化的錯綜性の中での新たなローカルな文化アイデンティティ創出の機会でもあることを指摘した。
  • ホスト-ゲスト間の信頼構築の機序 ―信じるための十分な根拠をもちえない目の前の相手をどこまでどのように信じるのか
    中村 香子
    2020 年 8 巻 2 号 p. 185-187
    発行日: 2020年
    公開日: 2022/10/29
    ジャーナル オープンアクセス
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