抄録
【目的】高血圧症及び高脂血症はいずれも血管内皮障害及び腎障害を惹起することが知られている。今回、Dahl食塩感受性ラット(Dahl-S rat)に高食塩食と高コレステロール食を単独又は併用負荷し、動脈及び腎臓に対する影響を検討した。【方法】Dahl-Sラットに正常飼料(ND群)、4%NaCl含有飼料(HS群)、1%コレステロール(Chol)飼料(HC群)及び4%NaCl+1%Chol飼料(HS+HC群)を与えて8週間飼育し、諸検査を実施した。【結果】8週後まで全例が生存した。血圧はHS群及びHS+HC群で8週間にわたり漸次上昇した。血清中Chol値はHC群及びHS+HC群で著明に増大した。大動脈の血管反応性はHS群及びHS+HC群でアセチルコリンによる内皮細胞依存性弛緩が減弱し、KCl収縮が増大したが、群間差はなかった。血漿中レニン活性及びアンギオテンシンII濃度はHS群及びHS+HC群で有意に低下した。腎臓重量はHS群及びHS+HC群で増加し、その程度はHS+HC群の方が大きい傾向を示した。腎臓中Cholエステル量はHS+HC群のみが有意な増加を示したが、腎臓中過酸化脂質には群間差はなかった。組織学的に胸部大動脈ではHS+HC群のみ単球付着が認められた。腎臓ではHS群及びHS+HC群で糸球体硬化、血管障害(中膜肥厚、炎症、壊死、血栓等)及び尿細管障害が認められ、また、HC群では極軽度の泡沫細胞集積及び小葉間動脈から細動脈の脂肪沈着が認められ、HS+HC群で著明に増大した。【結論】Dahl-Sラットにおいて,高食塩食・高コレステロール食併用負荷はコレステロール単独負荷より著明な動脈硬化前駆病変(マクロファージ浸潤,泡沫細胞集積)を惹起し,食塩単独負荷より腎障害を増悪させた.高食塩食・高コレステロール食併用負荷Dahl-Sラットは高血圧・高脂血症合併時の動脈硬化病変を検討する有用なモデルになると考えられる。