日本トキシコロジー学会学術年会
第32回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-54
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一般演題(ポスター)
飼料中植物性エストロジェンが内分泌かく乱候補化学物質による遺伝子発現変動に及ぼす影響のPercellome手法を用いた解析
*五十嵐 勝秀中津 則之松島 裕子相崎 健一北嶋 聡菅野 純
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抄録
内分泌かく乱化学物質問題に於いて考慮すべき要素の一つに食物中(動物実験の場合は飼料中)の植物性エストロジェン(PE)がある。従来の毒性試験系はこの様な飼料活性を鋭敏に検出するものとはなっていないが、人での健康評価問題も含めて、それらの受容体原性影響の把握が重要となって来ている。我々は、分子毒性研究として化学物質トキシコジェノミクス・プロジェクト(Percellome project)を立ち上げ、分子メカニズムに支えられた、より正確、迅速、安価なリスク評価系の開発を推進している。ここでは、受容体原性毒性研究への適用例として、飼料中PEが、外来ホルモン活性化学物質の遺伝子発現変動に及ぼす影響を解析した結果を報告する。
 C57BL/6雌をCRF-1 (PE含有)、或はPhytoestorogen low diet(PLD:PE測定限界以下)にて飼育し、卵巣摘出後2週目に17β-estradiol (E2)、bisphenol A(BPA)及びgenistein(GEN)を各々0.3microg/kg、70mg/kg、25mg/kg単回皮下投与し、投与後2及び24時間目に子宮を採取し、Percellome手法を適用した遺伝子発現プロファイルを得、飼料中PEの影響を解析した。
 遺伝子はその発現が飼料に影響されるものとされないものに大別された。前者はエストロジェン誘発遺伝子を含み、CRF-1で基礎発現値が高く、化合物投与での発現誘導幅がPLDで小さく、CRF-1では大きい傾向を示した。この結果はエストロジェンによる遺伝子発現変動がシグモイド曲線に従いPEがその底上げに働き、投与物質がその上に相加的に上乗せされた結果である可能性が示された。本研究は、化合物の生体作用を検討する際に飼料など背景となる状態の影響が無視出来ないことを遺伝子発現レベルで示した研究として注目される。
(本研究は厚労科研費・H13-生活-012及びH15-化学-002「化学物質リスク評価の基盤整備としてのトキシコゲノミクスに関する研究」による)
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© 2005 日本毒性学会
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