日本トキシコロジー学会学術年会
第32回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: O-54
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一般演題(口頭)
インドール酢酸類縁化合物のラット胎児の神経上皮細胞に対する影響
*古川 賢臼田 浩二阿部 正義小川 いづみ
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抄録
【目的】我々は植物ホルモンであるインドール酢酸(IAA)を妊娠12-14日目のラットに投与することにより,胎児に小頭症が誘発されることを報告した(Tox Pathol 2004 32: 659-667).本発表ではIAA類縁体5化合物についてラット胎児の神経上皮細胞に対する影響を病理組織学的に比較検討した.【材料及び方法】被験物質はN-methylindole-3-acetic acid (1Me-IAA),2-methyl-5-methoxyindole-3-acetic acid (2Me-5MeO-IAA),2-methylindole-3-acetic acid (2Me-IAA),5-methoxyindole-3-acetic acid (5MeO-IAA)及びindole butyric acid (IBA)と陽性対照物質としてIAAを用いた.投与用量は2Me-IAAのみ500mg/kg/dayとし,その他の被験物質は1,000mg/kg/dayとした.各群には8匹の妊娠Han Wistarラットを供試し,妊娠12,13及び14日目にオリーブオイルで懸濁した被験物質を強制経口投与し,妊娠14.5及び21日目に胎児を摘出した.妊娠14.5日目の胎児は重量測定し,ホルマリン固定後,病理組織学的検査に供試した.妊娠21日の胎児は外表検査及び重量測定を行い,ホルマリン固定後,脳を摘出し脳重量を測定した.【結果】1)母動物への影響:2Me-IAA,5MeO-IAA及びIBA群で一過性,1Me-IAA群で試験期間を通して体重増加量の減少が認められた.1Me-IAA及び2Me-IAA群で強直及び自発運動減少が認められ,2Me-IAA群では妊娠14日目に1例が死亡した.2)胎児・胎盤重量:1Me-IAA,2Me-5MeO-IAA,5MeO-IAA及びIBA群で妊娠21日目の胎児重量は減少傾向を示した.3)胎児外表検査:IAA群で口蓋裂の発生(49.5%)が認められた.4)胎児脳重量:絶対脳重量の低下は1Me-IAA,5MeO-IAA,IBA及びIAA群で,相対脳重量の低下はIAA群のみで認められた.5)胎児組織検査:5MeO-IAA及びIAA群で,妊娠14.5日目の脳室帯においてアポトーシスが認められ,その程度は5MeO-IAA群の方が弱かった.【考察】5MeO-IAA及びIAA群で認められたアポトーシスの程度は異なるものの,ともに脳室帯の中間層及び背側層で認められたことから,その発現は同じ機序によるものと推察された.1Me-IAA及びIBA群での脳重量低下は胎児の発育遅延によるものと推察された.
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© 2005 日本毒性学会
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