日本トキシコロジー学会学術年会
第32回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: O-55
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一般演題(口頭)
神経細胞アポトーシスを指標とした放射線誘発マウス胎児脳神経発生障害の解析
*石田 有香大町 康平岡 武伏木 信次島田 義也荻生 俊昭
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抄録
【目的】ヒトにおいて、発生中の神経細胞に生じた増殖抑制や移動障害といった混乱は出生後の精神遅滞を引き起こすと考えられている。マウスやラットではX線の胎生期照射により胎児脳神経細胞死や神経細胞移動障害、出生後の大脳皮質低形成・低脳重量、薬理学的には記憶・学習障害が起こることが知られている。今回我々は、LETの異なる二種類の放射線(ガンマ線、中性子線)のマウス胎児大脳皮質神経細胞死の線量効果関係について詳細に検討した。【材料と方法】胎齢13.5日のB6C3F1マウスに速中性子線(サイクロトロンより発生、ピークエネルギー:10 MeV、0.02~1.0 Gy)、あるいは137Csガンマ線(ガンマセル、0.1~2.0 Gy)を照射、その24時間後に胎児の頭部を採取しホルマリン固定後、大脳中央部を通る前頭断し、常法に従い包埋、パラフィン切片を作製した。切片はHE染色およびTUNEL染色を施し、大脳皮質の一定領域におけるTUNEL陽性細胞インデックスを解析した。【結果および考察】中性子線およびガンマ線照射のいずれでも頭頂部大脳皮質や側脳室周囲の神経細胞のアポトーシスが認められた。中性子線1.0 Gy 、ガンマ線2.0 Gy 群では神経細胞アポトーシスとともに大食細胞の浸潤増生が認められた。以上の変化は中性子線の方が強かった。TUNEL陽性細胞インデックスは線量依存的に増加し、閾値は認められなかった。また、いずれの放射線でも最低線量群で対照群と比べやや高いインデックスの個体が認められ、アポトーシスを指標にすると影響を鋭敏に評価できるものと考えられた。直線二次モデルにフィットさせ中性子線とガンマ線の生物効果比を算出した結果、低線量域で中性子線はガンマ線より約10倍アポトーシス誘発が大きいことが明らかとなった。
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© 2005 日本毒性学会
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