抄録
【目的】発生初期の胎児は小さく、かつ、培養も難しいため、一般に解析が困難である。一方、ES細胞から形成される胚様体(Embryoid body:EBと略す)は胎児の卵筒胚(egg cylinder, マウスで5?7日胚)に近似しており、発生初期胎児への影響を調べるために利用されている。しかし、血清のロットの違いや、培地中のフェノールレッド(PR)(エストロジェン作用がある)がES細胞の分化等に影響する恐れがある。そこで、新たにES細胞用無血清培地を作製し、そのES細胞分化への影響を検討した。【方法】Gabriele Proetzel ら(Methods in Mol. Biol., 185, 17-26, 2002)のES細胞用無血清培地の組成を参考にPR(-)の改良型無血清ES培地を作製した。マウスES細胞(E14-2a)を通常のES用培地にてゼラチンコートDish上で培養後、無血清ES培地で4日間浮遊培養して細胞分化を誘導させた。その間に、ES細胞培養系における神経分化誘導物質として良く知られているall-trans retinoic acid (ATRA)を0.5μMの濃度で添加した。4日間浮遊培養後、ATRAを除いた無血清培地でさらに浮遊培養あるいはゼラチンコートdish上で培養し、形態を観察した。【結果及び考察】ATRA添加培養4日後において、形成されたEBのサイズは対照群に比較して減少していたが、さらに浮遊培養を続けると、対照群より増大した。また、ATRA添加4日間の浮遊培養後、EBをゼラチンコートdish上で培養すると神経様細胞の出現増加が見られ、さらに培養を継続すると心筋様細胞の拍動が観察された。この結果、この系が発生毒性物質の影響解析に利用できることが期待された。