日本トキシコロジー学会学術年会
第33回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-050
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肝・消化器系
イヌにおける唾液腺への直接投与による流涎検討動物モデルの作出及びその応用
*三輪 恵理尾崎 晴茂須山 由美川崎 一哉吉岡 豊晃福井 英夫
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抄録
薬物誘発性流涎がいずれの唾液腺から主に分泌されるか、またその流涎の発現機作検討方法の確立を目的として、麻酔下でイヌの各唾液腺にそれぞれカニューレを装着し、薬物を直接投与した後に各唾液腺からの唾液分泌量を連続的に測定できる動物モデルを作出した。既知薬物として、全身曝露で流涎が惹起されるピロカルピン(ムスカリン3作動薬)、メトキサミン(α1作動薬)及びサブスタンスP(NK1作動薬)を用いた。その結果、ピロカルピンでは全ての唾液腺から、サブスタンスPでは主に耳下腺からの唾液分泌亢進が認められたが、メトキサミンでは変化はみられなかった。これらの結果から、本モデルを用いることにより、既知薬物の主たる作用部位を特定することが可能となり、各唾液腺の反応性の相違を明らかにすることができた。次に、流涎とNK1受容体との関係を明らかにするため、NK1作動薬GR73632を用いて流涎の発現機作を検討した。その結果、GR73632は静脈内投与で唾液分泌の亢進が認められたが、その作用はアトロピンでは抑制されず、NK1拮抗薬MK-869で著明に抑制された。また、各唾液腺へのGR73632の直接投与によりサブスタンスPと同様に耳下腺での唾液分泌を亢進したが、MK-869の前処置により抑制された。従って、GR73632の耳下腺での唾液分泌亢進は、中枢のNK1受容体への直接作用あるいはムスカリン受容体を介する副交感神経の興奮によるものではなく、主に耳下腺に局在するNK1受容体への直接作用によると推察された。以上、本動物モデルは流涎の発現機作解明には有用であることが示された。
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© 2006 日本毒性学会
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