抄録
ヒト肝細胞キメラマウスは免疫不全肝障害マウスにヒト肝細胞を移植して、肝臓をヒト肝細胞に置換することにより作出される。このキメラマウスを医薬品開発研究に用いることにより、医薬品候補物質のヒトでの薬物動態、安全性試験がより正確に予測でき,医薬品開発研究がより効率的に進むものと期待されている。本発表ではヒト肝細胞キメラマウスの特性を検討するため、アセトアミノフェン投与による肝臓の遺伝子発現変化についてDNAマイクロアレイを用いて検討した。 ヒト肝への予想置換率70% 以上と試算されたヒト肝細胞キメラマウス(雄、雌)に0.5% Methyl Cellulose に懸濁したアセトアミノフェン1400 mg/kg BWを強制単回経口投与し、投与後4、24時間にて剖検に供した。なお、0 mg/kg BW投与群は0.5% methyl celluloseを投与し、投与後24時間にて剖検に供した。各肝臓からヒト肝細胞領域のみを採材し、GeneChip Human Genome U133 Plus 2.0 Array (Affymetrix Inc.)にて遺伝子発現解析を実施した。 投与後24時間で代謝関連遺伝子群の発現が変動する傾向にあり、特に脂肪酸生合成、グルタミン酸代謝に関連する遺伝子群に発現変動が認められた。一方でアセトアミノフェン投与により一般的に変動するアポトーシス関連遺伝子群の発現変動は4、24時間投与群ともにほとんど認められなかった。病理組織学的検査結果との関連性も含め、各投与群における遺伝子発現変動の解析結果からヒト肝細胞キメラマウスのもつ特性について考察し、報告したい。