抄録
ラットの性周期は膣の粘膜組織の観察によって発情前期(P),発情期(E),発情後期(M),休止期(D)の4つのステージに分類される.動物試験では,性周期の変化を利用して,各種検査のスケジュールを決定するための指標としたり,性周期の回帰性を利用して排卵や交尾の時期を推測している.また,性周期の変化に応じて卵巣,子宮,膣などの生殖器は特有の変化を示し,これらの変化には種々の性ホルモンが関与することが知られている.これらの知見を裏付ける実験として,雌ラットの性周期の各ステージに合わせて血液を採取し,血漿中の性ホルモン濃度を測定した.動物は8週齢のCrl:CD(SD)を用い,13日の馴化を行った.馴化5日目から13日までの9日間に膣スメアを採取し,性周期が正常に回帰している動物を使用した.10週齢の時点で目的の性周期を示した動物から採血を実施した.採血時点は,性周期が回帰する4日間のうちに計12時点を設定し,各時点の動物数は10匹とした.無麻酔下で鎖骨下静脈より約1mL採血し,血漿を採取した.得られた血漿から,プロラクチン,プロゲステロン,エストラジオール,LH,FSHの5項目のホルモン濃度を測定した.
<採血期間中の採血時点と性周期の変動>
採血時点は,第1日目:10,14,18,22時,第2日目:0,6,10,18時,第3日目:10,18時,第4日目:10,18時の計12時点とした.採血期間4日間の性周期は,第1日目:(D)→(P)→(E),第2日目:(P)→(E)→(M),第3日目(M)→(D),第4日目:(D)を示した.