抄録
[目的]ラット中期肝発がん性試験におけるF344/DuCrlCrlj、Slc:WistarHannover(RCC)およびCrl:CD(SD)系ラットの3系統の肝発がん感受性を比較検討した。
[方法]各系統のラットとも、6週齢の雄各群15匹(計60匹)にN-nitrosodiethylamine (DEN)を200 mg/kgの用量で1回腹腔内投与し、その2週間後より肝発がんプロモーターであるPhenobarbital Sodium Salt(S.PB)を0, 30, 125および500 ppmの濃度で6週間混餌投与した。実験第3週経過時に全動物について2/3肝部分切除術を行い、実験期間8週間で屠殺剖検し、肝臓の前がん病変である胎盤型glutathione S-transferase(GST-P)陽性細胞巣を画像解析装置(IPAP)を用いて定量的解析を行った。
[結果]肝臓重量では、F344ラットの30, 125および500 ppm群で、絶対および相対重量の有意な高値が用量に関連して認められた。WistarHanラットおよびSDラットの500ppm群では絶対および相対重量で有意な高値が、また125ppm群では相対重量で有意な高値が認められた。肝臓のGST-P陽性細胞巣の単位面積あたりの個数および面積は、F344ラットおよびWistarHanラットの30, 125および500 ppm群で用量に関連した高値が認められた。一方、SDラットでは125ppm、500ppm群で有意差は認められなかったものの高値傾向が認められた。
[結論]ラット中期肝発がん性試験におけるS.PBの肝発がんプロモーター作用に対する感受性は、F344、WistarHan、SDラットの順であり、SDラットは特に感受性が低いことが明らかとなった。加えて、F344ラットと同様、WistarHanラットも同試験に利用が可能と考えられた。