抄録
【緒言】細胞毒性試験にはさまざまな方法が知られているが、どの方法を使用するかの基準は明確ではない。我々は、5種類の方法(ミトコンドリア呼吸能を指標:WST1, MTS, MTT,アラマーブルー法(以下、AB法)及び細胞内ATP量を指標とするATP発光測定法、以下ATP法)を用いて比較・検証したので報告する。
【方法】1.色に対する影響 8種類の色素溶液の希釈系列を、96穴マイクロプレートに0.1mLずつ分注した後、上記5方法の基質でCHO-K1細胞を反応してプールした反応液をさらに0.1mLずつ分注し、それぞれの波長で測定した。2. 析出物に対する影響 5種類の析出する化合物の希釈系列を96穴マイクロプレートに0.1mLずつ分注した後、1と同様にそれぞれの方法の基質でCHO-K1細胞を反応してプールした反応液をさらに0.1mLずつ分注し測定した。3.CHO-K1細胞を96穴マイクロプレートに播種し(6000 cells/well)、前培養後、8種類の化合物を添加・培養した。細胞観察した後にそれぞれの方法で細胞毒性を測定した。
【結果及び考察】1. 吸光度測定法(WST1, MTS,MTT)は実際の値より高値であり、蛍光測定法(AB法)、発光測定法(ATP法)は実際より低値であった。2. 吸光度測定法は実際の値より高値であり、蛍光・発光測定法は析出物の影響を受けなかった。3. ATP法の細胞毒性の値が、細胞を観察し増殖の程度を数値化したものと最も相関が高かった。
以上の結果より吸光度を測定する細胞毒性試験法は、化合物の色及び析出に影響を受け、蛍光・発光強度を測定する細胞毒性試験法は、化合物の析出には影響されないが、色の影響をうけることが明らかになった。ATP法は、さらに操作性、感度および操作時間の面でも他の方法より優れており、細胞毒性試験を実施する上で有用な方法だと考えられる。