日本トキシコロジー学会学術年会
第35回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: W2-2
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小児医薬品開発における課題
小児治験について
*中村 秀文
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キーワード: 小児治験, 小児
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抄録
 子どもに対する薬の用法・用量、有効性・安全性を評価・確認するためには、治験・臨床試験の実施が必要不可欠である。しかしながら現状では、小児での治験が実施されないまま、多くの医薬品が小児に適応外使用されている。現在、この適応外使用を解決し、小児治験を推進するために、様々な取り組みが行われているところであり、質の高い小児治験の迅速な実施のために、国立成育医療センターを中核病院とし、小児治験のネットワークが構築されようとしている。
 小児医薬品の開発を本格的に進めるためには、小児治験が推進されるのみならず、非臨床試験の在り方についても、見直しが必要かもしれない。非臨床試験はヒトにおける有効性と安全性を予測するために行われるが、1)それぞれの動物種における試験結果が必ずしも同一でない、2)動物試験により導かれた安全性上の懸念(奇形や有害事象など)が、ヒトと一対一対応していないことも多い、など臨床現場から見て非臨床試験の結果は解釈が困難なことが多い。また動物試験の結果をうけて、小児における開発が中止されたニューキノロン系抗生物質や、1歳未満に対するオセルタミビル等のように、ヒトにおいて想定されるリスクベネフィットの十分な評価が行われずに、小児での開発が中断されているようにも感じられるケースもある。現場のニーズと、非臨床試験のシグナルを秤にかけ、小児における開発の必要性について十分な検討が行われるべきであろう。またヒトでの有効性・安全性をより正確に推測できるような実験系が開発されることも、小児医薬品開発のために必須であると考えられる。
 我が国では小児治験実施に際し、一律に幼弱動物試験の実施を規制当局が求めているとの批判もあるようである。小児医薬品開発における、非臨床試験の位置づけなどについてもより踏み込んだ議論が行われ、より適切な体制が整備されることを期待している。
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© 2008 日本毒性学会
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