日本トキシコロジー学会学術年会
第35回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: CS1-2
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子ども・胎児の肝障害の基礎と臨床
肝臓疾患における抗酸化療法の作用メカニズム
*瀧谷 公隆
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キーワード: 脂肪肝, ビタミンE
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抄録
【背景】非アルコール性脂肪肝は、肝障害をおこすほどのアルコール摂取がないのにもかかわらず、肝臓に中性脂肪が過剰に蓄積した状態である。脂肪肝に炎症・線維化が加わり、慢性的な肝機能異常を呈する疾患を非アルコール性脂肪肝炎(non-alcoholic steatohepatitis: NASH)と呼ぶ。小児科領域においてもNASHは散見されるため、今後注意するべき疾患である。抗酸化能を有するビタミンEはNASHに効果を認めるが、その詳細なメカニズムは不明である。今回我々は、脂肪肝モデルであるメチオニン・コリン制限食ラット(MCDラット)にビタミンEを投与し、肝障害・炎症・線維化・過酸化脂質障害に対する効果を検討し、作用メカニズムの解明を試みた。 【方法および結果】Wistarラット(4週齢,雄)を1)対照食群、2)対照食+ビタミンE過剰群、3)MCD食単独群、4)MCD食+ビタミンE過剰群の4群に分けて、各々の飼料を4週間摂取させた。MCD食群(単独群およびビタミンE過剰群)の肝組織は、脂肪滴の蓄積、中心静脈周囲の炎症と線維化を認めたが、ビタミンE投与による組織の改善は認めなかった。MCD食単独群において、ビタミンE輸送タンパク質(α-tocopherol transfer protein: α-TTP)遺伝子発現の低下を認めた。Western blot法で抗4-HNE(4-hydroxy-2-nonenal)抗体付加蛋白を検討したところ、ビタミンE投与にて改善がみられた。また過酸化脂質物質であるTBARS濃度(肝臓)は、ビタミンEにより抑制されていた。 【考察】今回の実験では、ビタミンEによる抗酸化作用のみを認めた。MCDラットではα-TTPの発現が抑制されて肝にビタミンEを蓄積することにより、酸化ストレスから肝を防御していると考えられた。
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© 2008 日本毒性学会
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