抄録
Steroid and xenobiotic receptor (SXR) は、主に肝臓及び小腸に発現し、CYP3Aなどの薬物代謝・排泄に関する遺伝子の発現を制御している。近年、osteosarcoma株においてビタミンK2がSXRを介してコラーゲン蓄積に重要な遺伝子(TSKU)を増加させることが報告され、SXRが骨組織の維持に重要な働きを担っていると考えられている。前回、我々は正常ヒト骨芽細胞株(hFOB; ATCC)を用い、Bisphenol A (BPA) のSXRを介した作用を報告した(三木ら、第34回日本トキシコロジ-学会学術年会、2007年)。本研究では、ヒト骨組織を用いてコラーゲンとSXRの発現を組織化学及び免疫組織化学にて検討し、さらに、hFOB/SXR遺伝子導入株 (hFOB/D3、D6及びD7;Control株 hFOB/D12及びD13) を用い、コラーゲンの蓄積及び関連遺伝子の発現を検討した。結果、骨組織の検討では、コラーゲン染色陽性部及び一部の軟骨細胞にSXRの発現が認められた。培養細胞の検討では、いずれの細胞株においてもBPA (10-7及び10-6 M) の添加 (72時間) にて、コントロールと比して有意な細胞数の増加を確認したが、hFOB/D3、D6及びD7での増殖の割合が高かった。また、BPA (10-7 M) 添加によってCYP3A4及びTSKUの有意な発現誘導が認められたhFOB/D3及びD6では、Control株 hFOB/D12及びD13と比較して有意なコラーゲンの蓄積を認めた。骨組織では骨基質の約90%がコラーゲンで、残りの10%がオステオポンチンなどの非コラーゲン性タンパク質であり、コラーゲンは骨の石灰化の基質として重要な役割をしている。以上の結果からSXRは骨質維持に重要な役割を担っており、BPAがその機能を攪乱することが示唆された。