日本トキシコロジー学会学術年会
第35回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: O-18
会議情報
3.毒性機序I (肝)
2-(2’-Hydroxy-3’,5’-di-tert-butylphenyl)benzotriazole (HDBB)の毒性 ―血中濃度及び肝薬物代謝酵素活性に対する影響
*平田 睦子松野 喜代美川端 光彦矢島 加奈子松山 隆史広瀬 明彦鎌田 栄一江馬 眞
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抄録
HDBBは建材や自動車部品などのプラスチック樹脂成型品に紫外線吸収剤として使用されている。我々は、昨年の本学会において、HDBBの28日間反復投与毒性試験を行った結果、その毒性に25倍程度の顕著な性差 (雄>雌)が認められたことを報告した。本研究では、HDBBの性差のメカニズムを明らかにするための検討を行った。雌雄CD(SD)ラットにHDBB (0.5, 2.5, 12.5 mg/kg/day)を28日間反復強制経口投与し、LC/MS/MS法により血漿中HDBB濃度を測定した。その結果、雌雄共に用量に依存した増加がみられ、性差はみられなかった。HPLC-PDA法により血漿中代謝物の検索を行ったが、いずれの投与群においてもHDBB代謝物はほとんど検出されなかった。雌雄ラットの肝ミクロソーム及びS-9を用いた代謝安定性試験では、肝ミクロソームを用いた際に代謝が認められたが (HDBB残存率: 73.4~76.1%)、HDBB代謝能に性差はみられなかった。HDBB (0.5, 2.5, 12.5 mg/kg/day)を28日間反復強制経口投与した雌雄CD(SD)ラットの肝薬物代謝酵素活性を測定した結果、雄では、2.5 mg/kg以上の投与群でアミノピリンN-脱メチル化活性、テストステロン2α-及び16α-水酸化活性の低下がみられた。さらに、すべての投与群でラウリン酸 12-水酸化活性の増加及び7-エトキシレゾルフィンO-脱エチル化活性の低下が認められた。雌では、12.5 mg/kg投与群において、ラウリン酸 12-水酸化活性の増加がみられたが、その他にHDBB投与による影響は認められなかった。以上の結果から、HDBBの毒性にはペルオキシソーム増殖作用が関与しており、この作用に対する感受性の差がHDBB毒性の顕著な性差を導いた可能性が示唆された。
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© 2008 日本毒性学会
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