日本トキシコロジー学会学術年会
第37回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P3
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一般演題 ポスター
抗炎症および薬物代謝酵素誘導作用を併せ持つ食用植物の探索
*武田 結花大沼 友和西山 貴仁小倉 健一郎平塚 明
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抄録
【目的】ハーブに代表されるように植物は治療薬やサプリメントとして利用されている。植物ごとに効果は様々であるが,その中でもセ リ科・キク科植物は抗炎症・解毒作用を目的とし使用されることが多い。近年,アントシアニンなどの植物成分によるがん抑制作用が 注目されている。これらの成分が有する抗炎症作用により慢性的な炎症反応が抑制され,組織のがん化が防止されると考えられている。 また,スルホラファンなどの植物成分は発がん物質の解毒を促進する薬物代謝酵素誘導作用を有することでがん予防作用を示すとされ る。抗炎症作用を評価するために,一酸化窒素(NO)の産生抑制を測定した。薬物代謝酵素誘導作用を評価するために,glutathione S -transferase(GST)とNAD(P)H: quinone oxidereductase 1(NQO1)の活性を測定した。本研究では,セリ科・キク科食用植物の 中に,発がんの初期段階を抑制すると考えられるこれら二つの作用を有する植物が存在するかどうか検討した。
【方法】植物を凍結乾燥・粉砕し得た粉末をメタノールで抽出し,各植物のメタノール抽出物を得た。NO産生抑制に関する実験にはマ ウス腹腔マクロファージJ774.1細胞を,GSTおよびNQO1誘導に関する実験はラット正常肝由来のClone 9細胞をそれぞれ用いた。 細胞生存率の測定はMTT法を用いた。
【結果・考察】調査した植物のメタノール抽出物の中で細胞毒性を示さない濃度で処理した時,NO産生抑制およびGSTとNQO1誘導作 用が最も強かったものは三つ葉,次いでよもぎであった。三つ葉とよもぎ抽出物のNO産生に対する50%阻害濃度はそれぞれ43μg/mL および90μg/mLであった。NQO1活性は三つ葉抽出物で処理すると未処理のものと比べ2.5倍上昇し,代表的な誘導剤であるスルホラ ファン(2.3倍)と同程度の上昇率を示した。以上の結果より,三つ葉抽出物は抗炎症および薬物代謝酵素誘導作用を併せ持つことが分 かった。
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© 2010 日本毒性学会
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