日本トキシコロジー学会学術年会
第37回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P25
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一般演題 ポスター
ラットの物体認識におけるドネペジル塩酸塩の影響
*阿部 浩幸岡嶋 匠堤 宏禎勝 尚子土山 道夫古川 茂典
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抄録
【目的】物体認識試験は,ラットの新規物体への好奇心を利用した記憶学習試験の一つである。他の記憶学習試験のように,水からの逃 避や電気ショック等の嫌悪刺激を必要としないため,動物に大きな負荷をかけることなく記憶学習を評価することができる。本研究で は,アルツハイマー治療薬であるドネペジル塩酸塩を用いて,ラットの物体認識に与える影響を検討した。【方法】SD系雄性ラットを 使用した。物体を入れる観察箱に馴化させておいた動物を,その翌日に同一の観察箱に入れ,2個の同一物体を探索させた(獲得試行)。 獲得試行の24時間後,片方の物体を別の新規物体に交換して物体を探索させた(テスト試行)。ドネペジル塩酸塩(1, 3 mg/kg, p.o.)は テスト試行の1時間前に投与した。テスト試行において2個の物体の合計探索時間に対する新規物体と既知物体の探索時間の差の割合 (識別指数)を記憶の指標とし,対照群と比較した。【結果及び考察】獲得試行24時間後のテスト試行において,対照群は低い識別指数を 示したが,ドネペジル塩酸塩群は用量依存的に識別指数を増加させ,3 mg/kgでは有意な作用が認められた。なお,薬物投与による著 しい自発運動の増減は観察されなかった。以上の結果より,ドネペジル塩酸塩は物体認識試験において,時間依存的な忘却に対する記 憶亢進効果を有することが示唆された。
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© 2010 日本毒性学会
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